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MLB

なぜ田中はクオリファイング・オファーを受けられなかったのか? QOをめぐる球団、そして選手たちのさまざまな思惑

宇根夏樹

2020.11.27

FAとなった先発投手では、ストローマン(左上)やゴーズマン(左下)もQOを受けたのに、実績が上の田中(右)が受けられなかった理由とは……?(C)Getty Images

FAとなった先発投手では、ストローマン(左上)やゴーズマン(左下)もQOを受けたのに、実績が上の田中(右)が受けられなかった理由とは……?(C)Getty Images

 今オフにFAとなった選手のうち、6人が今季まで在籍していた球団からクオリファイング・オファー(QO)の申し出を受けた。QOは、FAとなる選手に対して在籍球団が単年の再契約を申し出ることができる制度(過去にQOを受けたことがある選手や途中移籍の選手は除外される)で、契約内容はメジャーの年俸上位125人の平均と同額の1年契約となる。今オフは1890万ドル(約19億6600万円)だ。

 6人のうち3人は先発投手だったが、やや意外な顔ぶれだった。サイ・ヤング賞にも輝いたレッズのトレバー・バウアーは当然としても、メッツのマーカス・ストローマンは今季1試合も登板していない。また、ジャイアンツのケビン・ゴーズマンはQOを提示されたこと自体が意外と報じられたほどで、スターターとしての確たる実績には乏しい。その一方で、同じくFAとなったヤンキースの田中将大の名前は、その中にはなかった。
 
 このことを疑問に思った方もいるだろう。田中は2014年のヤンキース入団以来、ずっと先発2~3番手の役割を堅実に果たしてきた。昨年まで6年連続2ケタ勝利を達成し、今季も10先発で防御逸3.56。耐久性と安定感に関してはストローマンとゴーズマンの2人よりも上だ。

 だが、今回改めて明らかになったのは、球団が重視するのは「来季、どれだけの働きをしてくれるのか」であることだ。ストローマンとゴーズマンは、その点で田中以上の評価を得ている。ストローマンは16~19年の4年間で、FIP(運不運に左右されやすい要素を除外し、投手本来の実力に焦点を当てて算出する疑似防御率)がいずれも3点台と安定している。また、16~17年には2年続けて200イニングをクリアしており、耐久性も証明済みで、来季で30歳と田中より若い。

 一方、ゴーズマンは今季、短縮シーズンとはいえ、奪三振率やFIPが自己ベストを大きく更新するなど、投球内容が劇的に改善。年齢もストローマンと同じく、来年で30歳だ。少なくとも球団は、来季の2人が「1年1890万ドルに見合う働きをしてくれるだろう」と踏んでいたからこそ、QOを提示したのだ。
 
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