「オレの体にはドジャーブルーの血が流れているんだ!」
現地時間1月7日に93歳で亡くなった元ドジャースの名将トミー・ラソーダのこの名言は、日本でもよく知られている。このような印象深い言葉を生むセンスからも分かるように、ラソーダは他の監督とは一線を画すアクの強いキャラクターでも知られていた。ここでは、ラソーダの数々の逸話の中から、3つを厳選して紹介しよう。
▼奥さんよりも野球が好き
ラソーダのドジャースに対するチーム愛は相当なものだったが、野球そのものに対する愛情もまた格別だった。あまりの偏愛ぶりに、ある日ラソーダの妻ジョー夫人が思わず問い質した。
「私思うんだけど、あなたは私よりも野球の方が好きよね?」
ラソーダはあまり迷うそぶりもなく、「それは確かだと思う」と答えた。「でも、フットボールやホッケーよりはお前のことを愛しているよ」。
これは、正確にはラソーダが話したジョークで、実際にこのようなやり取りがあったかは定かではない。だが、この持ちネタが今も語り草になるほど、ラソーダの野球愛は有名だった。ある時、「そんなに熱意を込めて野球に打ち込んで、燃え尽きることはないのですか?」と記者に聞かれたラソーダは、「好きなことをしているのにどうして燃え尽きるんだ? 君はかわいい女の子とキスするのに飽きたりするのか?」と答えている。
▼インタビューで放送禁止用語連発
ラソーダがドジャースの監督に就任して3年目の1978年5月14日。この日、ドジャースはカブスと延長15回の死闘の末に7対10で敗れた。この試合のヒーローは、カブスの4番デーブ・キングマン。15回の決勝3ランを含む3本塁打の大暴れだった。
当然、試合後のラソーダへのインタビューでも、「キングマンの大活躍はどう思いましたか?」と質問が飛んだ。敗戦でよほど苛立っていたのか、「キングマンをどう思うかって!?」と、まるで火が点いたように話し出したラソーダは、“Fワード”を連発して力の限りキングマンを罵倒。「試合に負けたのに、どうしてそんなことを聞かれなきゃならないんだ?」と怒り心頭だった。これは新聞記者向けのインタビューだったので大事に至らなかったが、もしテレビ中継されていたら完全に放送事故だっただろう。
▼マスコットと大立ち回り
相手チームの選手とならともかく、マスコットとまで乱闘してしまうのがラソーダだ。88年8月28日のフィリーズ戦。フィリーズのマスコット、フィリー・ファナティックが腹がでっぷりと突き出たラソーダそっくりの人形とともに登場していじり倒した。
これに怒ったラソーダはダッグアウトから飛び出して、ファナティックを追いかけて引きずり倒し、人形を奪って痛烈な一撃を見舞った。人形を奪われたファナティックは悔しそうにグラウンドから引き上げていった。
なお、ラソーダは翌年のエクスポズ戦で、ドジャースのダグアウトの屋根で踊っていたエクスポズのマスコット『ヨッピー』にキレて審判に退場を要求。これを受け入れた球審が前代未聞の「マスコット退場処分」を告げたことがある。なお、退場宣告をした球審は2006年の第1回WBC、日本対アメリカ戦の誤審で有名なボブ・デビッドソンだった。
名将であると同時に、優れてエンターテイナーでもあったラソーダの死には、球界の内外から惜しむ声が続出している。彼がドジャーブルーの空の上で安らかに眠ることを、改めて祈りたい。
文●筒居一孝(SLUGGER編集部)
【PHOTO】スター選手が勢ぞろい! 2020MLBプレーヤーランキングTOP30
現地時間1月7日に93歳で亡くなった元ドジャースの名将トミー・ラソーダのこの名言は、日本でもよく知られている。このような印象深い言葉を生むセンスからも分かるように、ラソーダは他の監督とは一線を画すアクの強いキャラクターでも知られていた。ここでは、ラソーダの数々の逸話の中から、3つを厳選して紹介しよう。
▼奥さんよりも野球が好き
ラソーダのドジャースに対するチーム愛は相当なものだったが、野球そのものに対する愛情もまた格別だった。あまりの偏愛ぶりに、ある日ラソーダの妻ジョー夫人が思わず問い質した。
「私思うんだけど、あなたは私よりも野球の方が好きよね?」
ラソーダはあまり迷うそぶりもなく、「それは確かだと思う」と答えた。「でも、フットボールやホッケーよりはお前のことを愛しているよ」。
これは、正確にはラソーダが話したジョークで、実際にこのようなやり取りがあったかは定かではない。だが、この持ちネタが今も語り草になるほど、ラソーダの野球愛は有名だった。ある時、「そんなに熱意を込めて野球に打ち込んで、燃え尽きることはないのですか?」と記者に聞かれたラソーダは、「好きなことをしているのにどうして燃え尽きるんだ? 君はかわいい女の子とキスするのに飽きたりするのか?」と答えている。
▼インタビューで放送禁止用語連発
ラソーダがドジャースの監督に就任して3年目の1978年5月14日。この日、ドジャースはカブスと延長15回の死闘の末に7対10で敗れた。この試合のヒーローは、カブスの4番デーブ・キングマン。15回の決勝3ランを含む3本塁打の大暴れだった。
当然、試合後のラソーダへのインタビューでも、「キングマンの大活躍はどう思いましたか?」と質問が飛んだ。敗戦でよほど苛立っていたのか、「キングマンをどう思うかって!?」と、まるで火が点いたように話し出したラソーダは、“Fワード”を連発して力の限りキングマンを罵倒。「試合に負けたのに、どうしてそんなことを聞かれなきゃならないんだ?」と怒り心頭だった。これは新聞記者向けのインタビューだったので大事に至らなかったが、もしテレビ中継されていたら完全に放送事故だっただろう。
▼マスコットと大立ち回り
相手チームの選手とならともかく、マスコットとまで乱闘してしまうのがラソーダだ。88年8月28日のフィリーズ戦。フィリーズのマスコット、フィリー・ファナティックが腹がでっぷりと突き出たラソーダそっくりの人形とともに登場していじり倒した。
これに怒ったラソーダはダッグアウトから飛び出して、ファナティックを追いかけて引きずり倒し、人形を奪って痛烈な一撃を見舞った。人形を奪われたファナティックは悔しそうにグラウンドから引き上げていった。
なお、ラソーダは翌年のエクスポズ戦で、ドジャースのダグアウトの屋根で踊っていたエクスポズのマスコット『ヨッピー』にキレて審判に退場を要求。これを受け入れた球審が前代未聞の「マスコット退場処分」を告げたことがある。なお、退場宣告をした球審は2006年の第1回WBC、日本対アメリカ戦の誤審で有名なボブ・デビッドソンだった。
名将であると同時に、優れてエンターテイナーでもあったラソーダの死には、球界の内外から惜しむ声が続出している。彼がドジャーブルーの空の上で安らかに眠ることを、改めて祈りたい。
文●筒居一孝(SLUGGER編集部)
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