プロ野球

「銀行マン」たちが都市対抗で演じた野球ドラマ。四国銀行の『倍返し』作戦が動き出した

大友良行

2021.01.24

四国銀行の快進撃は、大会のひとつのニュースとなった。写真:大友良行

 人気テレビドラマ「半沢直樹」を彷彿とさせる野球ドラマが、第91回都市対抗野球大会で展開された。いつも1回戦負けの弱小チームが、まさかの快進撃を見せたのだ。その主役を演じた「銀行マン」たちの活躍ぶりとはどんなものだったのか。

 四国・高知市代表の四国銀行は、今年4年ぶり19回目の出場。補強を含め、選手22人の決して大きくないチームだ。野球だけでなく、仕事でも即戦力のため、強豪企業チームと比べると、その練習時間は極端に短い。

 しかし、それでも勝てることを証明してくれた。

 初の1大会2勝でベスト8に進出。四国勢として第48回(1977年)の松山市丸善石油以来となる8強入りを果たしてエースの菊池大樹と主将の柴田一路外野手が「優秀選手賞」に選ばれた。チームとしては、「小野賞」も受賞している。小野賞とは、都市対抗野球育ての親、故・小野三千麿氏の功績を称えて第27回大会(1956年)に創設されたもので、大会を通じて素晴らしい活躍をした選手、チームに与えられる賞だ。

 四国銀行の快進撃は、1回戦の南関東第3代表の千葉県富里市のハナマウイ戦から始まった。MAX151キロの大黒柱・菊池をマウンドに送り出すと、相手打線を5安打10奪三振に抑え完封勝ちを収めたのだ。
 
 プロ注目のドラフト候補生は、普段は高知市万々支店に勤務する。早朝の練習が終わると、スーツに着替えて敏腕バンカーに早変わり。既存の法人、個人の取引先を訪問して、新規開拓や悩みごとの相談などで、外回りの営業が日常業務だ。顧客との野球談議に花が咲くことで商談が進むことは多いと言う。

 ハナマウイ戦は1-0の僅少差だったが、その1点を叩き出したのが、マネジャーの大役を兼務する山中大地外野手だ。

 3回裏、この回先頭打者の山中は「打った瞬間、入るかなと思ったが本塁打を打った経験が少ないので、入ってくれという思いでした。結果的には、大きな一発となりました」と決勝打を振り返る。