プロ野球

積極的な動きを見せるプロ野球選手会。「構造改革協議会」再開がもたらす球界の“未来”とは

THE DIGEST編集部

2021.01.23

コロナ禍が球界にも直撃する中、プロ野球選手会は“現状”を変えるために次なる一手を打っていく。写真:金子拓弥(THE DIGEST写真部)

 2020年にOPS1.012という傑出した成績を記録した村上宗隆(ヤクルト)や日本シリーズMVPの栗原陵矢(ソフトバンク)が、2019年以前の過去16年間にプロ野球で投じられた400万球を解析したAIキャッチャーと対戦したら、どちらが勝つだろうか。

 新型コロナウイルスの影響でステイホームを強いられる1月10日、そんな"夢の対戦"を企画したのが日本テレビ系列で放送された『プロ野球No.1決定戦!バトルスタジアム』だ。プロ野球ファンにとって正月の風物詩となったこの番組は1985年に始まり、今年で35回目を迎えた。

 じつはこの番組、読売テレビとともに日本プロ野球選手会が主催している。選手会の森忠仁事務局長は、シーズンオフにお茶の間に向けて露出する目的をこう説明する。

「野球普及のために行なっています。テレビ局を巻き込んでやっているこうした番組は全部、選手会の主催ですね。基本的にはテレビ局が内容を考えて、選手会が安全面などの部分をチェックして、ゴーを出すか判断しています」
 
 オフシーズンだからできるこうした企画に加え、選手会は近年、さまざまな動きを積極的に仕掛けている。例えば昨年12月、「構造改革協議会」の再開を求めることを決議した。読んで字のごとく、プロ野球の構造について球団側と選手会で議論し、球界をより良くしていこうという場だ。

 設立のきっかけは、2004年の球界再編騒動で選手会が史上初のストライキを実施したことだった。選手会の要求によって2005年1月に第1回が開催され、年に3、4回のペースで開かれた。2004年には明治大学の一場靖弘投手に4球団が金銭を渡していたことが発覚し、構造改革協議会ではドラフトの改革案についても話し合われている。選手会は2005年、FA制度改革やユースチームの設立などについて具体的に提言した「日本プロ野球構造改革案」を発表しており、構造改革協議会では移籍の活性化や年俸問題も議論された(日本プロ野球構造改革案は選手会のHPに掲載)。

 選手会と球団側で話し合った成果は大小さまざまあり、交流戦の実現や、戦力外通告のルール化(10月1日からクライマックスシリーズ開幕前日までに第1次通告を行い、CS全日程終了翌日から日本シリーズ終了翌日までに第2次通告を行わなければならない。日本シリーズ出場チームはシリーズ終了5日後まで)、FA権の取得に関わる故障者選手特例措置制度の導入などが決められた。

 しかし、構造改革協議会は数年間開催されたのち、いつのまにか立ち消えになった。10年以上のブランクを経た今、選手会が再開したいと考えている裏にはコロナ禍の苦境がある。
 
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