プロ野球

「スイングも、投げたりもできない」隔離生活を余儀なくされた青木宣親が、若手に伝えた一番大事なこと〈SLUGGER〉

岩国誠

2021.02.04

「トレーニングだけやっていて、本当に振り始めたのはキャンプに来てからだった」という青木だが、第1クールでの調整は順調に進んだようだ。写真:岩国誠

「この3日間で思っているよりは『行けるな』っていう感じはしている。間違いなく調整は進むと思っています」

 プロ18年目の今シーズン。異例のスタートととなったヤクルト・青木宣親は、キャンプ第1クールをそう振り返った。

 若い選手たちと共に、去年は海外で合同自主トレを行なっていた青木。今年は新型コロナウイルスの影響で国内で始動となったが、場所は変わっても最下位からの巻き返しへ、しっかりと準備を進めるはずだった。

 しかし、1月6日に同行していた村上宗隆が新型コロナウイルスに感染。青木ら他の選手たちはPCR検査で陰性となったものの、濃厚接触者となり、ホテルでの隔離生活を余儀なくされた。

「スイングもできない。投げたりもできない。野球はやっていない」

 隔離期間は、同行していたトレーナーも含め、ホテルの部屋から外出することが許されず、予定は大幅な変更を強いられた。その間に行なっていたのがリモートでのトレーニングだ。時間を決めて、モニター越しにトレーナーの指導を仰ぎながら、自分の体重を利用する自重トレーニングで体幹強化に務めた。

 日本のみならず、メジャーの舞台でも結果を残してきた青木は、自らの経験から若い選手たちに、普段からトレーニングの重要性を説いてきた。

「日本人選手って、まだまだトレーニングの重要性をわかってない人が多い。僕もずっと言ってはいるんですが、なかなかそれって(理解してもらうことが)難しくて」
 
 それが今回、野球の動きができない状態になったことで、若い選手たちもトレーニングに目を向けざるを得ない状況となった。

「『ちゃんとしたトレーニングをしておけば、必ず技術に落とし込むことはできる。これはマイナスにはならない』『絶対にできることはあるから、意識して自分の体を変えられるようにやっていこう』と、LINEとかでずっと言い続けてました」

 迫りくるキャンプインを前に、中には不安を感じる若い選手もいただろう。そんな彼らを鼓舞しながら、自らの信念に基づいてトレーニング続ける日々。隔離期間を終えると、春季キャンプは直ぐそこだった。

「3月26日にスタメンに入ってくれたらそれでいい」と、調整に全幅の信頼を寄せる高津監督は、「一番気がかりだった村上と共に自主トレを行なっていたメンバーが、抑えながらもできる範囲のメニューはできていた」と、この3日間の動きに安堵していた。

「この1クールでどういう感じかなと、自分でもチェックしたかった。トレーニングだけやっていて、本当に振り始めたのはキャンプに来てからだったが、実際いい感じで触れている。要はそういう自分の体を知ることが、すごい重要だと思います」(青木)

 稀代のヒットメーカーが、自らと向き合い、戦い続けるシーズンが今年も始まった。

取材・文●岩国誠