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プロ野球

【則本昂大のアマチュア時代】驚異の20奪三振で一躍全国区の投手に。野球人生を一変させたターニングポイントに迫る〈SLUGGER〉

西尾典文

2021.02.05

4年春の大学選手権で、20奪三振という圧巻な活躍を見せた則本。写真:産経新聞社

4年春の大学選手権で、20奪三振という圧巻な活躍を見せた則本。写真:産経新聞社

 毎年新たなスターが出現するプロ野球の世界。しかし、今を時めく選手たちは、必ずしもアマチュア時代から高い評価を受けていたわけではない。そんな“現在”のスター選手のかつての姿を、年間300試合現地で取材するスポーツライター・西尾典文氏に振り返ってもらった。今回は長年チームの先発投手陣を支えている則本昂大(楽天)を取り上げる。

 則本が全国の舞台でデビューを果たしたのは三重中京大2年の時に出場した大学選手権である。初戦の広島経済大戦にリリーフで登板し、145キロを超えるスピードで柳田悠岐(ソフトバンク)からも三振を奪っているが、延長10回サヨナラ負けとなり責任投手となっている。この試合は筆者も見ていたが、途中で東京ドームから神宮球場へ移動したため、残念ながら則本の投球は見ていない。ただ、この時からすでに則本が高い評価を得ていたわけではない。三重県内で高校の指導者をしている大学の先輩に則本について聞いた時も「速いけどコントロールはない。クルーン(元横浜・巨人)みたいやな」と話していた。

 そして実際の投球を現場で見たのは4年春のリーグ戦、皇学館大戦だ。この試合で則本は最速148キロをマークし、被安打3、10奪三振完封とさすがの投球を見せているが、当時のノートには『少しスライダーに頼り過ぎ』と残っている。コントロールもクルーンほどの荒れ球とは感じなかったが、かなりアバウトであり、右打者の外に偏っていたのを覚えている。
 
 そんな則本の評価が一変したのが2ヵ月後の大学選手権だ。初戦で松葉貴大(大阪体育大・現中日)と投げ合い、延長10回タイブレークのすえ1対2で敗れたものの、20奪三振の快投を見せたのである。リーグ戦の時と比べてもフォームの躍動感、腕の振り、ボールの勢い、全てがワンランク上のように見えたことを覚えている。この試合で一気に則本の名前は全国区となり、進路も社会人野球からプロ入りへと変更になったのである。

 高校生の場合、甲子園で急成長して人生が変わることもあるが、則本の場合はこの大阪体育大戦の東京ドームがその舞台だったと言えるだろう。大学生であっても、舞台や相手によってそのポテンシャルが最大限に引き出されることがあるということをよく思い知らされた例であり、則本の野球人生でも大きなターニングポイントだったことは間違いないだろう。

文●西尾典文

【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間約300試合を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

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