「もう14年前ですか、変わってないですね。あまり変わっていなくって、非常に居心地の良さは感じています」
ヤクルトの春季キャンプ第2クール初日。沖縄・浦添の地で14年ぶりに"現場復帰"を果たした古田敦也臨時コーチは、初指導を終えた直後にそう話して笑顔を見せた。
2年連続セ・リーグ最下位。そこからの巻き返しを狙う高津臣吾監督は、故・野村克也監督の元、かつて黄金時代を共に支えた名捕手に声をかけた。12球団ワーストの防御率である投手陣の再建のために「バッテリーの強化が必要」と、強く感じての招聘だった。
「去年の負け方が正直、僕もOBですから悔しい。5位ともだいぶ離された最下位でしたから」。その思いから依頼を快諾した古田臨時コーチは、指導初日から約8時間、後輩たちへ持てる知識と技術を注ぎ込んだ。
特に捕手強化への思いは強く「お前たちで勝つんだぞ」と話している。全体練習後に室内練習場で行われた捕手強化メニューでは、キャッチングやブロッキング、ワンバウンドと止め方などを1軍参加の4捕手へつきっきりで指導し、実際に自ら手本を示す場面もあった。
「まずは捕ることから。捕り方がうまいとピッチャーから信頼される。捕手が評価されるところっていろんな側面があるんですが、基本は『きっちり捕ってくれる。あいつだったらワンバウンドを必ず止めてくれる』って言う安心感が信頼につながって、いいバッテリーが出来上がってくる。捕り方、ボールの止め方、そのあとの処理の仕方など、僕はこう言う考えでやっていてと話しました」
去年、ヤクルト捕手のスタメン出場は西田明央が最多。だが、シーズン120試合に対して出場試合数は54と半数以下、正捕手の固定は大きな課題となっている。古田臨時コーチはどう見ているのか。
「(今回一軍スタートの)キャッチャーは4人。正捕手を決めるのは僕の仕事ではないですが、実績が多少あると言う点で西田と中村悠平が(正捕手争いを)一歩リードしている。しかし、本人たちもわかっていると思うが、そのリードは小さな一歩。横一線とは言わないが、みんなで切磋琢磨して欲しい。不甲斐ないって言われたくないでしょうから、その気になってやってくれると思っています」
ただ、一長一短にはいかないことを、自らの経験で十分理解している。
「僕もそうでしたが、そんなに簡単にはいかない。相手もプロ。レベルは高いですし、こっちも思った通りにいかない。ストレスもたまる中で、それをどう消化してベストを選ぶというか、ベターを選んで少しでも勝っていく。このまま終わっちゃ、せっかくの野球人生そうじゃいけない。やられたらやり返すんでしょ? 今の時代は。倍返しとまでは言わないけれど、そういう気概を持ってやって欲しい。キャッチャーは相手に嫌われなきゃ。あいつがいなかったら、うちが勝てるのにって思わせるキャッチャーになっていかないといけない。自分で言うのもなんですが、僕も敵からはだいぶ嫌われた方なので」
古田氏は2月11日まで臨時コーチを務める予定だが、その日は奇しくも、野村克也元監督の一周忌にあたる。
「いつも言っていますが、野村監督からかなり影響を受けています。それを継承していかないといけない。それに加えて、僕の経験で得たものある。野球はどんどん進歩していますから、野球は変わって行ってるんです。だけど温故知新じゃないですが、普遍的なものっていっぱいあるので、そういうことを伝えていこうと思います」
ただ、その考えを押し付けることはしない。
「それを受け取った選手たちが、『今に当てはめようか』っていう感覚でいてくれるのが、僕は一番いいと思っています。僕たちの意見が『100で正しい』と思う必要はなくて、それを80くらいに思って、今の(野球)に乗せてくれたらありがたい。もっといいものが出来上がるんじゃないですかね」
チームスローガンは『真価・進化・心火』。今年は最下位からの巻き返しへ"真価"が問われるシーズンだ。14年ぶりの古巣帰還となった古田臨時コーチは自らの導きで、"進化"を促し、後輩たちの"心の火"を大いに燃え上がらせられるか。
取材・文●岩国誠
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ヤクルトの春季キャンプ第2クール初日。沖縄・浦添の地で14年ぶりに"現場復帰"を果たした古田敦也臨時コーチは、初指導を終えた直後にそう話して笑顔を見せた。
2年連続セ・リーグ最下位。そこからの巻き返しを狙う高津臣吾監督は、故・野村克也監督の元、かつて黄金時代を共に支えた名捕手に声をかけた。12球団ワーストの防御率である投手陣の再建のために「バッテリーの強化が必要」と、強く感じての招聘だった。
「去年の負け方が正直、僕もOBですから悔しい。5位ともだいぶ離された最下位でしたから」。その思いから依頼を快諾した古田臨時コーチは、指導初日から約8時間、後輩たちへ持てる知識と技術を注ぎ込んだ。
特に捕手強化への思いは強く「お前たちで勝つんだぞ」と話している。全体練習後に室内練習場で行われた捕手強化メニューでは、キャッチングやブロッキング、ワンバウンドと止め方などを1軍参加の4捕手へつきっきりで指導し、実際に自ら手本を示す場面もあった。
「まずは捕ることから。捕り方がうまいとピッチャーから信頼される。捕手が評価されるところっていろんな側面があるんですが、基本は『きっちり捕ってくれる。あいつだったらワンバウンドを必ず止めてくれる』って言う安心感が信頼につながって、いいバッテリーが出来上がってくる。捕り方、ボールの止め方、そのあとの処理の仕方など、僕はこう言う考えでやっていてと話しました」
去年、ヤクルト捕手のスタメン出場は西田明央が最多。だが、シーズン120試合に対して出場試合数は54と半数以下、正捕手の固定は大きな課題となっている。古田臨時コーチはどう見ているのか。
「(今回一軍スタートの)キャッチャーは4人。正捕手を決めるのは僕の仕事ではないですが、実績が多少あると言う点で西田と中村悠平が(正捕手争いを)一歩リードしている。しかし、本人たちもわかっていると思うが、そのリードは小さな一歩。横一線とは言わないが、みんなで切磋琢磨して欲しい。不甲斐ないって言われたくないでしょうから、その気になってやってくれると思っています」
ただ、一長一短にはいかないことを、自らの経験で十分理解している。
「僕もそうでしたが、そんなに簡単にはいかない。相手もプロ。レベルは高いですし、こっちも思った通りにいかない。ストレスもたまる中で、それをどう消化してベストを選ぶというか、ベターを選んで少しでも勝っていく。このまま終わっちゃ、せっかくの野球人生そうじゃいけない。やられたらやり返すんでしょ? 今の時代は。倍返しとまでは言わないけれど、そういう気概を持ってやって欲しい。キャッチャーは相手に嫌われなきゃ。あいつがいなかったら、うちが勝てるのにって思わせるキャッチャーになっていかないといけない。自分で言うのもなんですが、僕も敵からはだいぶ嫌われた方なので」
古田氏は2月11日まで臨時コーチを務める予定だが、その日は奇しくも、野村克也元監督の一周忌にあたる。
「いつも言っていますが、野村監督からかなり影響を受けています。それを継承していかないといけない。それに加えて、僕の経験で得たものある。野球はどんどん進歩していますから、野球は変わって行ってるんです。だけど温故知新じゃないですが、普遍的なものっていっぱいあるので、そういうことを伝えていこうと思います」
ただ、その考えを押し付けることはしない。
「それを受け取った選手たちが、『今に当てはめようか』っていう感覚でいてくれるのが、僕は一番いいと思っています。僕たちの意見が『100で正しい』と思う必要はなくて、それを80くらいに思って、今の(野球)に乗せてくれたらありがたい。もっといいものが出来上がるんじゃないですかね」
チームスローガンは『真価・進化・心火』。今年は最下位からの巻き返しへ"真価"が問われるシーズンだ。14年ぶりの古巣帰還となった古田臨時コーチは自らの導きで、"進化"を促し、後輩たちの"心の火"を大いに燃え上がらせられるか。
取材・文●岩国誠
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