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プロ野球

【山川穂高のアマチュア時代】高い選球眼と動きの良さ。西武とのケミストリーが生んだHRバッター〈SLUGGER〉

西尾典文

2021.02.09

巨漢ながらスイングのコンパクトさとフットワークの良さが印象に残ったという。写真:大友良行

巨漢ながらスイングのコンパクトさとフットワークの良さが印象に残ったという。写真:大友良行

 毎年新たなスターが出現するプロ野球の世界。しかし、今を時めく選手たちは、必ずしもアマチュア時代から高い評価を受けていたわけではない。そんな“現在”のスター選手のかつての姿を、年間300試合現地で取材するスポーツライター・西尾典文氏に振り返ってもらった。今回紹介するのは、地方大学出身ながら球界を代表するホームランバッターとなった山川穂高(西武)だ。

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 富士大時代には2年春に全日本大学野球選手権に出場し、その後行われた日米大学野球でも代表に選ばれている山川だが、個人的な巡り合わせが悪く、現場でプレーを初めて見たのは3年春のリーグ戦だった。

 この日一番のお目当ては青森大の150キロ右腕、吉田友大(元富士重工)だったが、次に試合に登場した当時3年だった山川の打撃も当然よく覚えている。最初の印象は以外とスイングがコンパクトだというところ。大学日本代表にも選ばれるような選手だけに相手の岩手大もかなり警戒していたが、誘うようなボール球はしっかり見送り、第3打席にはセンター前に強烈なヒットを弾き返している。また巨漢ながら一塁のフットワークが良く、第2打席の併殺打の時の一塁到達タイムも4.48秒と決して遅いものではなかった。
 
 この後、ドラフトまで常に山川が高評価だったかというとそういうわけではない。次に見たのは大学日本代表候補合宿の紅白戦で、その時からとにかくアウトステップが気になり、当時のノートにも高い評価の記載は見当たらない。

 その年の秋の明治神宮大会の初戦、国際武道大戦では後輩の多和田真三郎(西武・当時1年)がノーヒット・ノーランの快挙を達成しているが、その試合で1番・ファーストで出場した山川は、サイドスローの江川恭介(元JFE東日本・当時2年)の前にタイミングを上手く外され、2三振、ノーヒットに抑え込まれている。

 そして翌年の大学選手権でもそのイメージが大きく変わることはなく、パワーや動きの良さを考えればプロ入りはするだろうと考えていたが、正直2位という指名順位は高いように感じたのをよく覚えている。ただ、プロでの活躍を見ればこの順位で指名した西武の判断は正解だったことは間違いない。

 また、打撃を生かすチームカラーも山川本人とマッチしていたことも大きいだろう。多少の欠点には目をつぶり、長所に目を向けた西武の戦略は見事である。

 そういう意味では、今年1位で入団した渡部健人も同じタイプなだけに、山川に続くような成長を期待したいところだ。

文●西尾典文

【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間約300試合を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

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