プロ野球

【近本光司のアマチュア時代】非力な俊足選手のイメージが一変!大阪ガスで打力が開花

西尾典文

2021.02.11

大阪ガスで5番に入った近本は、都市対抗で快音を連発した。写真:産経新聞社

 毎年新たなスターが出現するプロ野球の世界。しかし、今を時めく選手たちは、必ずしもアマチュア時代から高い評価を受けていたわけではない。そんな"現在"のスター選手のかつての姿を、年間300試合現地で取材するスポーツライター・西尾典文氏に振り返ってもらった。今回紹介するのは、阪神で不動のリードオフマンとして活躍している近本光司だ。

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 近本のプレーを初めて見たのは関西学院大3年春の立命館大戦。1番、センターで出場し相手先発の西川大地(現日本新薬)から第一打席にショート内野安打を放っているものの、4打数1安打に終わりチームも完封負けを喫している。当時のプロフィールは170㎝、66㎏。ショート内野安打とその後に放ったセカンドゴロ2本の一塁到達タイムは4.04秒、3.98秒、3.98秒と十分俊足と言えるレベルだったが、足の速さ以外強い印象は残っていない。

 この秋の同志社大戦でも平尾奎太(現Honda鈴鹿)からヒットを放った試合を見たが、これもショートへの内野安打である。社会人1年目に春先のスポニチ大会、秋の日本選手権で見た際も、小柄で足は速いが非力な選手という印象は変わらなかった。
 
 そのためドラフト指名解禁となる2018年になっても個人的にそれほど注目していたわけではなかったが、ひとつの情報が近本を見直すきっかけとなった。都市対抗本選が始まる前に大阪ガスの関係者から、注目すべき選手は近本という連絡が入ったのだ。

 そして、その言葉通り5番に入った近本は、都市対抗で快音を連発。左中間へも大きい当たりを放つ打撃はクリーンアップに相応しいものだった。それでも社会人の外野手が上位指名されるケースは少なく、外れ外れながら1位指名という評価にも驚かされたが、プロ入り後の活躍を見れば阪神の決断は正しかったと言えるだろう。

 スピードが武器のタイプの選手が、ここまで社会人での短期間で打撃の力強さをアップさせた例は非常に珍しい。大学入学当時は投手だったことを考えると、その成長ぶりは驚異的とも言える。2年連続盗塁王とプロでもそのスピードをいかんなく発揮しているが、社会人で大きく打撃を伸ばしたからこそ今の活躍があることは間違いないだろう。

文●西尾典文

【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間約300試合を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。