MLB

パドレスが若き至宝、タティースJr.と14年総額359億円の超大型契約! それでもローリスク・ハイリターンな理由とは

宇根夏樹

2021.02.26

躍動感あふれるプレースタイルと、金髪のドレッドヘアが特徴のタティースJr.。同じ名前の父もメジャー通算113本塁打を記録した内野手だった。(C)Getty Images

 フェルナンド・タティースJr.(パドレス)は、走攻守すべてにダイナミックなプレーを見せる次代のスター候補だ。そのタティースJr.と今月、パドレスは14年3億4000万ドルの延長契約を交わした。これは、マイク・トラウトの12年4億2650万ドルとムーキー・ベッツ(ドジャース)の12年3億6500万ドルに次ぎ、総額の史上3位に位置する。

 タティースJr.の総額は、MLBのサービスタイム(アクティブ・ロースターに入っている期間)が累計3年以下の、年俸調停の申請権を得る前の選手では史上最高額になる。また、契約期間も史上最長だ。それまでは、ジャンカルロ・スタントン(当時マーリンズ/現ヤンキース)の13年3億2500万ドルとブライス・ハーパー(ナショナルズ)の13年3億3000万ドルが最も長かった。

 球団にとって、長期契約にはリスクがつきまとう。例えば、スタントンは過去2年、故障が相次いで計41試合の出場にとどまっており、「不良債権」との批判が多い。さらに、年齢による衰えは、故障以上に懸念される。2012年にエンジェルスと10年2億4000万ドルの契約を交わしたアルバート・プーホルスにしても、ここまでの9年間でOPS.900以上は一度もなく、契約2年目以降は.800に達したことすらない。
 
 ただ、タティースJr.が契約期間中に衰えるリスクは、長期の大型契約を交わした他の選手と比べ、はるかに低い。タティースJr.は今年1月に22歳の誕生日を迎えたばかり。契約最終年でも35歳だ。32歳で契約したプーホルスや、20代後半で長期契約を結んだスタントンらとは話が異なる。これまで、総額2億ドル以上の契約を手にした延べ22人中、契約1年目が25歳未満はタティースJr.だけだ。

 こうしたことからすると、リスクはゼロではないが、タティースJr.の延長契約はパドレスにとって安い投資になるかもしれない。何より、日本のように選手が一つの球団で現役生活を全うすることが極めて少ないMLBにおいて、若きスターを実質的な「生涯パドレス契約」で囲い込むことができたのは、興行的にもとても大きいといえるだろう。

文●宇根夏樹

【著者プロフィール】
うね・なつき/1968年生まれ。三重県出身。『スラッガー』元編集長。現在はフリーライターとして『スラッガー』やYahoo! 個人ニュースなどに寄稿。著書に『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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