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プロ野球

佐々木朗希は「大谷以上?」現役スカウトが見るドラフトNo.1投手の現在地

氏原英明

2019.10.16

大谷に続いて160kmの壁を突破した“令和の怪物”佐々木。中日の名スカウトは人類未到の球速の可能性にも言及する。 写真:徳原隆元、Getty Images

大谷に続いて160kmの壁を突破した“令和の怪物”佐々木。中日の名スカウトは人類未到の球速の可能性にも言及する。 写真:徳原隆元、Getty Images

 佐々木朗希は2019年、いろいろな意味で世間を騒がせた。
 
 今年の4月、大谷翔平(エンジェルス)が高校3年生春の時点で到達できなかった、160kmの壁を先に超えた。「160kmを超える前例があれば、またそこを目指す人が出てくる」と言った大谷が望んだ通り、佐々木は大谷に見事続いて見せた。しかしそれ以外にも、今年の夏の岩手県大会決勝戦の登板回避や、Uー18日本代表での血マメによる降板などのひ弱なイメージも、同時に世間にインパクトを与えた。

 その潜在能力があまりにも高いから、人々は注目し、また同時に物足りなさも感じるのだろう。佐々木自身、ハキハキとモノを言うタイプでもなく、どこか不思議な感じがするところが、彼の未知な魅力を増幅させるファクターになっているのかもしれない。

 プラス面とマイナス面が同居する佐々木の評価について、中日のチーフスカウト・米村明氏にぶつけてみると、例に漏れず、やはり彼のポテンシャルには「別格」の凄みを感じていると言う。

「大げさな表現じゃなく、170kmのストレートを投げる身体能力があると感じる。今の彼の姿を見ていると、胸板が薄いとか課題も見える。そういうところが補われると、今で163kmですから、将来的には170kmを投げられるんじゃないかな、という予測になるんですよ」
 
 米村氏が圧倒されたのは、今年の夏の甲子園の後に神宮球場で開催された、Uー18高校日本代表と大学日本代表の壮行試合でのことだ。

 佐々木は、世間の多くが注目するこの試合で先発マウンドに立った。血マメを作って1イニングのみでの降板となったが、米村はその際のある1シーンに度肝を抜かれたと言う。

「プレーボールの前に投球練習があるでしょ? その最後に投げた球をキャッチャーが捕球して二塁に送球するじゃないですか。あの時に、佐々木がストレートを力一杯にして投げたんですよ。ところが、それをキャッチャーが捕球ができずに、バックネットまで到達したんです。ちょっと高めやったけど、彼が本気で投げたら、全日本のキャッチャーでも捕球できない。『なんという球威なのか』と、あの1球で僕はそう思った。打者と勝負するんじゃなくて、キャッチャーが捕球できるかどうかという次元の球を投げている。そこまでの能力を持つピッチャーはなかなかいない」
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