高校野球

しびれる好ゲームとなった相模対甲府の“東海対決”で光った小兵・大塚瑠晏の「たまらん」好守<SLUGGER>

氏原英明

2021.03.21

再三にわたる好守で甲子園を沸かせた大塚。その華麗な守備は、現役最高の名手と謳われる「あの人」を彷彿とさせる。写真:塚本凜平(THE DIGEST写真部)

「たまらん、たまらん、たまらん……」

 記者席で東海大相模対東海大甲府の「東海大対決」を見ながら、そう呟きたくなった。

 1点を争う好ゲームで手に汗握る展開だったから、なおさらだ。そんな言葉が出た。甲府のエース・若山恵斗がコーナーを巧みに突くピッチングを見せれば、公式戦初先発の相模・石川永稀は強気な投球で打者の的を絞らせなかった。

 7回まで両軍ゼロ行進の好ゲームを演出した一人が、身長168センチと小柄な相模の遊撃手・大塚瑠晏だ。

 三遊間深くからの大遠投あり、二遊間よりのボールに追いついてのスーパープレーあり。前方へのダッシュも素早く、バウンドが中途半端になっても慌てることがない。その守備は「源田たまらん」でハッシュタグで人気を博す源田壮亮(西武)を見るようだった。
 大塚は言う。
 
「石田(隼都)が軸であるチームですけど、(初先発の)石川の調子が良かったので不安はなかったです。ただ、石川には経験が少ないので、自分たちが守ってあげようと思っていました。ずっとローゲームの試合で集中が切れなかった試合でした」

 試合開始早々から大塚の守備は華麗だった。

 大塚は左打者の時は三遊間を詰める大胆なシフトを敷くのだが、1回裏、甲府の先頭打者・猪ノ口絢太が投手の頭を超える打球を放つような当たりでも追いつき、俊足の猪ノ口を刺した。

「ポジショニングはデータを見ているのと、試合の中で考えて決めている」と語る大塚は、この好プレーの後も6個のゴロを軽快に処理していったのだった。

 試合は一進一退の好ゲーム。相模は、9回裏から背番号1の石田が満を持して登板。試合を決めたのも、11回1死二塁で打席に立った大塚だった。カウント1-1からの3球目を一閃、右翼前へ弾き返した。
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