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高校野球

将来性たっぷりの八戸西・福島蓮。敗戦後のインタビューに見せた投手としての矜持<SLUGGER>

氏原英明

2021.03.23

決して満足いく投球ではなかったこの日の福島だが、それでも随所に将来性を感じさせた。写真:塚本凛平(THE DIGEST写真部)

決して満足いく投球ではなかったこの日の福島だが、それでも随所に将来性を感じさせた。写真:塚本凛平(THE DIGEST写真部)

 譲れない信念が彼にはあるのだなと思った。

 八戸西の長身右腕・福島蓮が1回戦で涙を呑んだ。189センチから投げ下ろすストレートとスプリットが持ち味の好投手で、21世紀枠での出場ながら、プロから注目されている投手だ。

 結果は5回を投げて6安打5失点。86球を投げたところで降板した。

「満足できる球はほとんどなかったですね」

 試合後のリモートインタビュー。悔しさをにじませた福島はそう言って、自身のピッチングを振り返った。

 長く甲子園の取材をしているが、初出場の公立校などの選手たちは、インタビューでは決まって収穫を口にする。本音であるかどうかはともかく、課題よりも収穫や手応えを多く語ることで甲子園の経験をプラスにしたいと考えるものだ。
 この日の取材でも、記者側からはそうした答えを求めるかのような質問も少なくなかった。

「フォークで三振を取るなどいいボールもあったのでは――」
 
 そんな質問を遮るくらいの浮かない表情で、彼は上のように答えたのだった。

「フォークで三振を取ることもありましたけど、それもちょっとなので。もっとストレートがいいところに決まっていれば、決め球でフォークを使えたし、三振も取れたと思います。フォークで三振を取れたことに手応えは感じていないです」

 福島の口から出てくるのは反省の弁ばかり。負けたのだから、強気な言葉が聞こえてこないのは当然だが、かと言って記者の質問に同調するかのように答えをするのでなく、自身のピッチングと正面から対峙しているところに彼のピッチャーとしての矜恃を見る。

 もっとも、福島のピッチングを初めて見たが、素材が高く、将来性に魅力をたっぷり感じる投手という印象を受けた。スラっとした体躯がそう感じさせる部分もあり、未完成の大器と言っていいだろう。
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