門馬監督はまず、3対2のサヨナラについて「粘り勝ち。最後の最後までしぶとく、執念もって戦った小島(大河)の一打がこのチームのすべてを物語っていると思います」とコメント。
続けて、先制を許し、追いついた直後に勝ち越され、9イニング中8度も得点圏に進められた明豊高校(大分)について訊かれると、「明豊高校の選手たちが非常に気迫をもって向かってくる。その姿勢が前半、後半まで完全に押されていた」と胸中を明かした。 それでも、「そこを何とか、崖っぷちのところで踏みとどまって、最後9回のサヨナラの場面につながったと思います」。
“粘り勝ち”。実際、東海大相模は今大会、緒戦の東海大甲府戦は3対1、2回戦の鳥取城北は1対0、準々決勝の福岡大大濠戦だけは8対0と大勝したが、準決勝・天理戦も2対0と2点差以内の接戦をものにしてきた。この土壇場の強さについて門馬監督は「昨年の秋、サヨナラで負けて(秋季関東大会準々決勝・東海大甲府1対2)、そこから始まったチームです。サヨナラで締めくくれて本当にうれしく思います!」と話した。
そしてこの勝利は、フィールドのメンバーだけで勝ち取ったものではないことも強調。大会中、主将の大塚瑠晏が急性胃腸炎で入院することになった。驚異的な遊撃守備力を発揮して話題を呼んだ存在だっただけに、彼の離脱は大きかったはずだ。
しかし、「大塚も病気と闘っています。我々はグラウンドで戦いました。大塚はいま、病院のベッドの上で戦っています。ただ今日の一戦、大塚も一緒に戦ってくれたと思います。すべての選手の力で今日の勝利をつかむことができました」と明かしている。“チーム一丸”となれたこともまた勝因だったようだ。
そして門馬監督は、まだコロナ禍が収まらない中で大会を開催できたことに対して関係各位に感謝する中でも、まず最初にお礼を述べたのは他でもない対戦相手だった。「全員でつかみとった優勝です。でも、これも、明豊高校がいてくれたからできた試合だと思います。まず、明豊高校のみなさんありがとうございました」
『第93回センバツ高校野球』は“2年分”の想いが詰まったこともあってか素晴らしい試合が多かった。そして決勝は、それに相応しい一戦となった。この春の経験を糧に選手たちはどう成長するのか。夏の甲子園への期待が早くも高まるばかりだ。
構成●THE DIGEST編集部