先発投手としての仕事をきっちり果たしても、結局打線の援護なく見殺し……という事態が、日本ハムのルーキー・伊藤大海に起こっている。
ここまでの4先発すべてQS、防御率も2.77と結果を残しているにもかかわらず、いまだに白星がつかない。この事実が示すように、「勝利数」は先発投手の純粋な実力を表す指標と言えないのはもはや“常識”。投手本人の実力のみで数字が変動する防御率や奪三振数とは違って、勝ち星には「打線の援護」や後を継いだリリーフ陣の投球という外的な要素も絡んでくる。
もちろん伊藤のみならず、打線の”無援護”ぶりに苦しんだ投手は枚挙にいとまがない。下記は1990年以降に最優秀防御率のタイトルを獲得しながら、2ケタ勝利を挙げられなかった投手の一覧である。
4勝/2.50 金田政彦(2002/オリックス)
8勝/2.46 郭源治(1994/中日)
8勝/3.27 戎信行(2000/オリックス)
8勝/2.73 金村暁(1998/日本ハム)
8勝/1.54 チェン(2009/中日)
8勝/1.95 山本由伸(2019/オリックス)
9勝/2.85 大野豊(1997/広島)
9勝/2.01 菅野智之(2016/巨人)
9勝/2.58 大野雄大(2019/中日)
これを見ると、特に際立っているのがオリックスの“援護不足”だろう。まだチーム名がブルーウェーブのだった00年は、歴代2位の打率.387を記録した日本ラストイヤーのイチローを中心に、リーグ2位の638得点を挙げるなど打線は強力だったが、どういうわけか戎を援護することはできなかった。また、戎は好投してもリリーフが打たれるケースが多かったのも原因。リーグトップの8完投から分かるように、「完投しないと勝てない」ような状態だった。
さらにひどかったのが02年。この年は金田に加え、防御率2.52で同じくオリックスの具臺晟がリーグ2位に入ったが、彼も5勝。2人合わせても10勝に届かないという惨状ぶりだった。
戎の時とは異なり、この年のオリックスは特に貧打に苦しめられ、438得点はダントツのリーグ最下位。その一方で、最多勝のタイトルを獲得したのは、防御率3.78(リーグ12位)ながら、いてまえ打線の援護を背景に17勝した近鉄バファローズのジェレミー・パウエルだった。
オリックスはその後も貧打にあえぎ、02年から3年連続で2ケタ勝利投手が1人もいないという事態に陥る。05年からは伝統的に強打のチームカラーを持つ近鉄と合併したものの、その後も貧打線ぶりは改善されることがなかった。05年以降の15年間で総得点リーグ最下位が6度。3位以上に入れたのは3度しかなく、最多勝投手は1人しか出ていない(10・14年の金子千尋)。
その金子も、2度目の最多勝を獲得した14年には、5月31日の巨人戦で9回を終えて無安打無得点の快投を披露しながら、打線の援護なく降板。延長でチームはサヨナラ負けで快挙達成を逃すという“見殺し”に遭っている。
また、19年の山本も、シーズン初先発となった4月3日のソフトバンク戦で9回1安打無失点の素晴らしい投球にもかかわらず、やはり打線が沈黙して引き分けに。この年だけでなく昨年も防御率リーグ2位、奪三振王にもなりながら相変わらず2ケタに届かずと、”無援護”の伝統は依然継続中だ。今季も4月23日時点で総得点82、15本塁打、OPS.660はリーグ4位。果たして山本は今季こそ10勝の”大台”に到達できるだろうか?
文●筒居一孝(SLUGGER編集部)
【宮崎キャンプPHOTO】オリックス|25年ぶりのリーグ優勝を目指すオリックスのキャンプに密着!
ここまでの4先発すべてQS、防御率も2.77と結果を残しているにもかかわらず、いまだに白星がつかない。この事実が示すように、「勝利数」は先発投手の純粋な実力を表す指標と言えないのはもはや“常識”。投手本人の実力のみで数字が変動する防御率や奪三振数とは違って、勝ち星には「打線の援護」や後を継いだリリーフ陣の投球という外的な要素も絡んでくる。
もちろん伊藤のみならず、打線の”無援護”ぶりに苦しんだ投手は枚挙にいとまがない。下記は1990年以降に最優秀防御率のタイトルを獲得しながら、2ケタ勝利を挙げられなかった投手の一覧である。
4勝/2.50 金田政彦(2002/オリックス)
8勝/2.46 郭源治(1994/中日)
8勝/3.27 戎信行(2000/オリックス)
8勝/2.73 金村暁(1998/日本ハム)
8勝/1.54 チェン(2009/中日)
8勝/1.95 山本由伸(2019/オリックス)
9勝/2.85 大野豊(1997/広島)
9勝/2.01 菅野智之(2016/巨人)
9勝/2.58 大野雄大(2019/中日)
これを見ると、特に際立っているのがオリックスの“援護不足”だろう。まだチーム名がブルーウェーブのだった00年は、歴代2位の打率.387を記録した日本ラストイヤーのイチローを中心に、リーグ2位の638得点を挙げるなど打線は強力だったが、どういうわけか戎を援護することはできなかった。また、戎は好投してもリリーフが打たれるケースが多かったのも原因。リーグトップの8完投から分かるように、「完投しないと勝てない」ような状態だった。
さらにひどかったのが02年。この年は金田に加え、防御率2.52で同じくオリックスの具臺晟がリーグ2位に入ったが、彼も5勝。2人合わせても10勝に届かないという惨状ぶりだった。
戎の時とは異なり、この年のオリックスは特に貧打に苦しめられ、438得点はダントツのリーグ最下位。その一方で、最多勝のタイトルを獲得したのは、防御率3.78(リーグ12位)ながら、いてまえ打線の援護を背景に17勝した近鉄バファローズのジェレミー・パウエルだった。
オリックスはその後も貧打にあえぎ、02年から3年連続で2ケタ勝利投手が1人もいないという事態に陥る。05年からは伝統的に強打のチームカラーを持つ近鉄と合併したものの、その後も貧打線ぶりは改善されることがなかった。05年以降の15年間で総得点リーグ最下位が6度。3位以上に入れたのは3度しかなく、最多勝投手は1人しか出ていない(10・14年の金子千尋)。
その金子も、2度目の最多勝を獲得した14年には、5月31日の巨人戦で9回を終えて無安打無得点の快投を披露しながら、打線の援護なく降板。延長でチームはサヨナラ負けで快挙達成を逃すという“見殺し”に遭っている。
また、19年の山本も、シーズン初先発となった4月3日のソフトバンク戦で9回1安打無失点の素晴らしい投球にもかかわらず、やはり打線が沈黙して引き分けに。この年だけでなく昨年も防御率リーグ2位、奪三振王にもなりながら相変わらず2ケタに届かずと、”無援護”の伝統は依然継続中だ。今季も4月23日時点で総得点82、15本塁打、OPS.660はリーグ4位。果たして山本は今季こそ10勝の”大台”に到達できるだろうか?
文●筒居一孝(SLUGGER編集部)
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