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自負があるならNPBは緊急事態宣言発令による無観客試合はすべきでなかった【豊浦彰太郎のベースボール一刀両断!】

豊浦彰太郞

2021.04.28

徹底した対策によって、昨年は来場者のコロナ感染者ゼロを達成したNPB。その実績があるのだから、無観客開催という判断は避けるべきだったのでは……。(C)Getty Images

徹底した対策によって、昨年は来場者のコロナ感染者ゼロを達成したNPB。その実績があるのだから、無観客開催という判断は避けるべきだったのでは……。(C)Getty Images

 4月25日、東京・大阪・京都・兵庫の4都府県を対象とする緊急事態宣言が発令。これによりNPBは無観客開催および日程変更を余儀なくされた。だが、都内の寄席ではないが、プロ野球はあくまで有観客を貫くべきだったと思う。

 斉藤惇コミッショナーは、昨年来の感染拡大対策の成果を強調し、あらかじめ「緊急事態宣言=無観客は納得いかない」とコメント。政府の正式発表後も「科学的根拠に基づいた合理的な説明と、経済的な補償が伴わなければ、無観客開催は受け入れ難い」と憤りを示した。この主張はまったくもってその通りだ。

 これは野球コラムで、政治を論じることを目的とはしたものではないが、今回の緊急事態宣言にも、その期間の設定にも、休業要請のあり方にも科学的根拠は感じられない。この1年間の政府のコロナ対策同様に、党利党略や地方自治体との駆け引き、財界への配慮、そして、五輪開催への影響などを優先した政治的判断だと筆者は思っている。

 逆にエビデンスやロジックベースなら、NPBの有観客開催の継続は理のある選択肢だったと言えるだろう。

 昨年の実績に加えて、営業面への打撃は無視できない。プロ野球チームは株式会社であり、“営利団体”だ(NPB機構は一般社団法人だが、利益を求めることは何の問題もない)。自粛のみを求められ、かつ意味のある補償を受けられないすべての事業者の権利に関しても、一石を投じることになると思う。その点では、寄席の「社会生活に必要なもの」という主張より、はるかに説得力がある。
 
 今回の緊急事態宣言はわずか17日間である。このような短い期間で「社会生活に必要」というのは、本来はライフライン系など物理的に必要なものに限定して考えるのが順当だ。落語の芸術性、文化的価値に異論を挟む気はさらさらないが、ここはあくまで社会インフラと言えるかどうかではないか。一方、そうでなくても、寄席にも営業活動を継続する権利はあるはずだ。権利の行使の抑制が求められるなら、それに見合った補償があるべきだろう。

 逆に、それがなければ感染拡大対策を講じる限り、権利を追求していいと思う。その意味では、東京寄席組合や落語協会、落語芸術協会はもっとホンネに忠実に、自らの経済的利益を守ることを声高に主張すべきだった。

 話をプロ野球に戻す。同調圧力への弱さが“国民性”とも言える日本において、あえて権利を主張するのは勇気の要る行為だと思う。しかし、プロ野球は娯楽の代表格である。多くの興行者の思いを代弁してもいいのではないか。

 ワクチン接種が遅々として進まぬ中、コロナ禍が収束するのはまだ先だ。IOCのバッハ会長の来日が17日に予定されているため、11日までの緊急事態宣言が延長される可能性は、政治判断的にも低いと言われている。だが、宣言の発令は今回が最後ではないかもしれない。やはり、プロ野球は対策をしっかり行っている自負がある限り、営業面での大きすぎる打撃を理由に、有観客開催の継続を選択すべきだったのではないだろうか。

文●豊浦彰太郎

【著者プロフィール】
北米61球場を訪れ、北京、台湾、シドニー、メキシコ、ロンドンでもメジャーを観戦。ただし、会社勤めの悲しさで球宴とポストシーズンは未経験。好きな街はデトロイト、球場はドジャー・スタジアム、選手はレジー・ジャクソン。
 

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