まだ前半戦終了まで1か月以上あるものの、にわかに熱を帯び始めているのがアウォード予想だ。MVP、サイ・ヤング賞、新人王の主要部門を誰が制するのかと、各種メディアが議論している中、アメリカン・リーグのMVPレースを牽引しているのは、間違いなく大谷翔平(ロサンゼルス・エンジェルス)だ。
日本でも連日その活躍が報じられているように、現地アメリカでも天才二刀流プレーヤーへの注目度は増すばかり。しかも、“色物”という物珍しさではなく、正真正銘の実力が評価されているのだ。打っては17本塁打がメジャー2位タイ、OPS(出塁率+長打率).951は7位。投げても防御率2.76、奪三振率12.76は40イニング以上の7位と、投打ともにメジャー屈指の実力を収めている。
もっとも、大谷の活躍があってもエンジェルスは現在30勝32敗で負け越し、地区4位とペナントレースの見通しは芳しくない。しかし日本のアウォードと異なり、現在のメジャーリーグではチーム順位が賞レースにそこまで影響することはないので、ほぼほぼ純粋に“パフォーマンス”が評価の対象となる。そして最も重要視されているのが、「WAR」という指標だ。
「WAR」とは「Wins Above Replacement」の略で、打撃・走塁・守備・投球を総合的に評価して、選手がどれだけ勝利に貢献しているのかを示す指標である。計算式は複雑ではあるものの、異なるポジションの選手、長所が異なる選手などを同じテーブルで見比べることができるため“分かりやすく”、特に大手データサイト『Baseball-Reference』(bWAR)と『FanGraphs』(fWAR)が算出しているものが重用されている。
そして、この総合指標において、大谷はbWARで堂々リーグ1位に立っているのだ。打者ではbWAR2.0、投手では1.5の計3.5を稼いでいて、これはア・リーグトップ(fWARは5位)。
メジャー全体でもザック・ウィーラー(フィラデルフィア・フィリーズ/3.9)、ブランドン・ウッドラフ(ミルウォーキー・ブルワーズ/3.8)、ケビン・ゴーズマン(サンフランシスコ・ジャイアンツ/3.6)に次ぐ4位というのだから、MVP候補として扱われるのも、贔屓目なしに“当然”と言えるだろう。
現地時間6月10日には、MLB公式放送局の『MLB Network』が、大谷とブラディミール・ゲレーロJr.(トロント・ブルージェイズ)の成績を比較しながら、ファンにア・リーグのMVP最有力候補はどちらかというアンケートを行なった。ゲレーロJr.のbWARは3.1と大谷には及ばないまでも、18本塁打、48打点、出塁率.435、長打率.643、OPS1.078がリーグ1位、打率.329は2位とあって打撃三冠王も視野に入っているのだから、こちらも納得だろう。
そこで思い出されるのが、2012年に勃発したMVP争いだ。メジャー45年ぶりの三冠王となったミゲル・カブレラ(デトロイト・タイガース)と、ルーキーながら走攻守に大活躍したマイク・トラウトのどちらがMVPにふさわしいかという、“新旧派閥”の大激論が展開されたのである。
投票自体はカブレラが圧勝したものの、bWARはカブレラの7.1に対してトラウトが10.5と大差をつけていた(さらに言えば、セイバーメトリクスの攻撃指標でもトラウトが勝っていた)。そして、この論争を機に「WAR」の概念がファンの間でも急激に浸透していき、現在の価値観が形成されるに至っている。
大谷とゲレーロJr.が現在のペースでシーズンを完走した時、果たして識者はどのような判断を下すのだろうか。願わくば、両雄とも怪我することなく、再び大激論が巻き起こるような成績を残してくれることを祈っている。
構成●SLUGGER編集部
【動画】大谷翔平、17号アーチは“ライバル”のゲレーロJr.に次ぐ2位。今後も快音を響かせるか
日本でも連日その活躍が報じられているように、現地アメリカでも天才二刀流プレーヤーへの注目度は増すばかり。しかも、“色物”という物珍しさではなく、正真正銘の実力が評価されているのだ。打っては17本塁打がメジャー2位タイ、OPS(出塁率+長打率).951は7位。投げても防御率2.76、奪三振率12.76は40イニング以上の7位と、投打ともにメジャー屈指の実力を収めている。
もっとも、大谷の活躍があってもエンジェルスは現在30勝32敗で負け越し、地区4位とペナントレースの見通しは芳しくない。しかし日本のアウォードと異なり、現在のメジャーリーグではチーム順位が賞レースにそこまで影響することはないので、ほぼほぼ純粋に“パフォーマンス”が評価の対象となる。そして最も重要視されているのが、「WAR」という指標だ。
「WAR」とは「Wins Above Replacement」の略で、打撃・走塁・守備・投球を総合的に評価して、選手がどれだけ勝利に貢献しているのかを示す指標である。計算式は複雑ではあるものの、異なるポジションの選手、長所が異なる選手などを同じテーブルで見比べることができるため“分かりやすく”、特に大手データサイト『Baseball-Reference』(bWAR)と『FanGraphs』(fWAR)が算出しているものが重用されている。
そして、この総合指標において、大谷はbWARで堂々リーグ1位に立っているのだ。打者ではbWAR2.0、投手では1.5の計3.5を稼いでいて、これはア・リーグトップ(fWARは5位)。
メジャー全体でもザック・ウィーラー(フィラデルフィア・フィリーズ/3.9)、ブランドン・ウッドラフ(ミルウォーキー・ブルワーズ/3.8)、ケビン・ゴーズマン(サンフランシスコ・ジャイアンツ/3.6)に次ぐ4位というのだから、MVP候補として扱われるのも、贔屓目なしに“当然”と言えるだろう。
現地時間6月10日には、MLB公式放送局の『MLB Network』が、大谷とブラディミール・ゲレーロJr.(トロント・ブルージェイズ)の成績を比較しながら、ファンにア・リーグのMVP最有力候補はどちらかというアンケートを行なった。ゲレーロJr.のbWARは3.1と大谷には及ばないまでも、18本塁打、48打点、出塁率.435、長打率.643、OPS1.078がリーグ1位、打率.329は2位とあって打撃三冠王も視野に入っているのだから、こちらも納得だろう。
そこで思い出されるのが、2012年に勃発したMVP争いだ。メジャー45年ぶりの三冠王となったミゲル・カブレラ(デトロイト・タイガース)と、ルーキーながら走攻守に大活躍したマイク・トラウトのどちらがMVPにふさわしいかという、“新旧派閥”の大激論が展開されたのである。
投票自体はカブレラが圧勝したものの、bWARはカブレラの7.1に対してトラウトが10.5と大差をつけていた(さらに言えば、セイバーメトリクスの攻撃指標でもトラウトが勝っていた)。そして、この論争を機に「WAR」の概念がファンの間でも急激に浸透していき、現在の価値観が形成されるに至っている。
大谷とゲレーロJr.が現在のペースでシーズンを完走した時、果たして識者はどのような判断を下すのだろうか。願わくば、両雄とも怪我することなく、再び大激論が巻き起こるような成績を残してくれることを祈っている。
構成●SLUGGER編集部
【動画】大谷翔平、17号アーチは“ライバル”のゲレーロJr.に次ぐ2位。今後も快音を響かせるか