プロ野球

【西尾典文のドラフト候補ランキング解説】高校生投手に好素材が集まる一方、大学・社会人はやや手薄<SLUGGER>

西尾典文

2021.06.22

年明けに続いてランキング1位に立った小園。彼をはじめ高校生投手に優れた素材が集まっている。写真:塚本凛平(THE DIGEST写真部)

 全体的な傾向としては、高校生の投手が中心になるというのは年初と変わらない印象を受ける。総合力でナンバーワンと見られる小園健太(市和歌山高)を筆頭に、選抜出場組では達孝太(天理高)、畔柳亨丞(中京大中京高)に加えて花田侑樹(広島新庄高)が浮上。さらに風間球打(ノースアジア大明桜高)と森木大智(高知高)の2人も甲子園未出場ながらこの春は見事なパフォーマンスを見せており、有力な1位候補であることは間違いない。

 大学生・社会人は昨年と比べると全体的に手薄な感が否めないが、そんな中でもさすがの投球を見せたのが広畑敦也(三菱自動車倉敷オーシャンズ)だ。先発だけでなくリリーフでも高い能力を示したことで、社会人だけでなく大学生も含めて即戦力ではナンバーワンの位置づけとなるだろう。

【表】2021ドラフト候補ランキング1~50位一覧(6月21日時点)

 大学生では、佐藤隼輔(筑波大)も昨年までのような安定感はなかったが、随所にポテンシャルの高さを見せており1位指名の可能性は高そうだ。そんな中で大きく浮上してきたのが長谷川稜佑(青森大)、隅田知一郎(西日本工大)、石森大誠(火の国サラマンダーズ)の3人。長谷川は体格を生かしたストレートの威力、隅田は変化球とストレートのコンビネーション、石森は躍動感あふれるピッチングとそれぞれ持ち味を大きく伸ばし、上位候補と呼べるだけの存在となっている。特に石森は独立リーグから初となる1位の可能性もあり、その意味でも注目だ。
 
 一方の野手は、万全の1位候補は不在という状況が続いている。高校ナンバーワンスラッガーと見られていた阪口樂(岐阜第一高)は秋と同様に確実性に大きな課題を残し、最後の夏でのプレーが順位に大きく左右することが予想される。順調にホームラン数を伸ばしている有薗直輝(千葉学芸高)、大学選手権でMVPを獲得した正木智也(慶応大)も1位候補と呼ぶには少し物足りない。攻守のバランスという意味では打撃を大きく伸ばした古賀悠斗(中央大)が打てる捕手という希少性もあって、少しリードしていると言えるだろう。

 高校生では松浦慶斗と関戸康介の大阪桐蔭コンビ、大学生では徳山壮磨(早稲田大)などが不振などでランク外となったが、能力の高さはあるだけにここからの巻き返しに期待したい。また、6月下旬から始まる社会人野球日本選手権、そして夏の高校野球で今回名前の挙がらなかった選手が一気に浮上してくることも十分に考えられる。上位指名候補も、万全と見られる選手は決して多くないだけに、10月のドラフト会議に向けてランキングが大きく変動する可能性は高いだろう。

文●西尾典文

【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間約300試合を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。