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大学野球

【全日本大学野球】12球団が熱視線を送るドラフト候補!西工大・隅田知一郎が残した特大のインパクト

上杉あずさ

2021.06.15

九州のドラフト候補ではナンバーワンの呼び声も高い隅田。春の段階で「今年のドラフトでは2位以内で指名される」との噂もあったが、その高い潜在能力を見せつけた。写真:田中研治

九州のドラフト候補ではナンバーワンの呼び声も高い隅田。春の段階で「今年のドラフトでは2位以内で指名される」との噂もあったが、その高い潜在能力を見せつけた。写真:田中研治

 連日、熱戦が繰り広げられた第70回全日本大学野球選手権記念大会は、慶応大学の34年ぶり4回目の優勝で幕を閉じた。2年ぶりに行なわれた大会で、選手たちはのびのびとプレーし、躍動した。今秋のドラフト候補生たちも堂々のアピールを見せた。

 初戦敗退で姿を消したものの、今大会トップクラスのインパクトを残し、全国にその名を轟かせた選手がいる。西日本工業大のエース・隅田知一郎だ。西工大は九州地区大学野球連盟北部九州ブロック代表で6年ぶりに全国の舞台に登場。今秋のドラフト候補としてすでに12球団が熱視線を送っている隅田だが、大学ではこれが初めての全国大会となる。だが、隅田は初の大舞台で、その評価を跳ね上げる圧巻のピッチングを披露した。

 全国大会常連の強豪・上武大との1回戦は、緊迫した投手戦となった。隅田はキレのある直球に精度の高い変化球を織り交ぜながら毎回の14奪三振。許した安打も4本のみだったが、0対1で惜しくも完投負けを喫した。その悔やまれる「1失点」を喫した場面が、この試合のハイライトと言っても過言ではない。隅田の野球人生にとっても色濃く刻まれた力と力のぶつかり合い。それは、強力・上武大打線の4番に座るブライト健太との対戦だった。
 
 ブライトが先頭打者として登場した2回。試合の主導権を握るためにも、ここが上武大打線を抑え込むカギになる。西工大バッテリーは迷わず真っ向勝負を挑んだ。1球目は低めのボール球、2球目は大飛球のファウル。そして3球目に投じた甘く入った真っすぐを左中間スタンドに運ばれた。この先制弾が、結果的に決勝点となった。

「インコース真っすぐを3つ」――前日から武田啓監督、山名浩伸捕手と隅田は作戦を練っていた。「ブライト選手にはインコースに真っすぐを3つ行こう。そこを抑えられたら乗っていけるし、評価も上がるぞ」。武田監督はバッテリーに発破をかけた。2球目にヒヤリとする大飛球を打たれたが、隅田と山名は怯むことなく、インコースに力いっぱいのストレートを投げ込む選択を変えなかった。しかし、それが甘く入ってしまい、本塁打とされたのだった。コースが甘くなったことは悔やまれるが、真っすぐで勝負したことは悔いのない決断だった、と隅田は振り返る。

 この一戦を経て、隅田は「(今の自分の)真っすぐではまだまだ勝負できないと思った」と反省を口にした。確かに、この1球が勝敗を分けることになった。しかし、最速148キロを計測した力のある直球と多彩な変化球で打者を翻弄し、四死球も攻めた結果許した1つのみ。大舞台で見事な投球を披露した。圧巻の14奪三振に関しては「意識していませんでした。気付いたらいっぱい(三振)とっていました」とはにかんだ。
 
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