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【データで見る大谷翔平】パワー全盛時代に風穴を開ける走力という“武器“。「スピード・スコア」は両リーグ8位の7.3を記録

THE DIGEST編集部

2021.07.16

パワフルな打撃で耳目を集める大谷。だが、その凄みは走塁にも表れている。(C)Getty Images

「ショウヘイを見ていると、1985年のベースボールを思い出す。リッキー・ヘンダーソンやティム・レインズのようなスピードも持っている」

 ロサンゼルス・エンジェルスのジョー・マッドン監督は大谷翔平について語る時、たびたび往年のレジェンドの名前を引き合いに出す。

 リッキーは言わずと知れた"世界の盗塁王"。シーズン130盗塁、通算1406盗塁のメジャー記録を誇り、パンチ力+選球眼も備えた最高のリードオフとも称されている。レインズも通算808盗塁を決めて、4度のタイトルを獲得。ともに殿堂入りを果たしているスピードスターだ。

 前半戦に33本ものホームランを放った大谷は、その球界最高クラスのパワーで日米を熱狂の渦に巻き込んでいる。しかし、彼は単なる長距離砲ではない。ピッチングもこなし、さらにはスピードもトップクラス。あらゆるツールが一人の野球選手に搭載された、パーフェクト・ベースボール・プレーヤーなのだ。今回はあまり語られることのないスピードについて、データから掘り下げていこう。
 
 選手のスピードを評価する際、一般的に使われるのは盗塁数だろう。大谷の前半戦の12盗塁は両リーグ17位タイ、メジャートップのちょうど半分にあたる。「なんだそうでもないな」と思った方はやや早計だ。昨今のメジャーリーグにおいて盗塁数は減少傾向にある。主に故障リスクを回避する意味合いが強く、他にも盗塁のためにカウントを不利にするよりも普通に打者に打たせたほうが得点の可能性が高いというデータも、この傾向に拍車をかけている。

 前半戦に2ケタ本塁打を打った選手は120人いるのに対し、2ケタ盗塁はわずか28人。両部門ともクリアしているのは大谷を含めて14人しかいないことを考えると、これだけでも大谷はパワーとスピードを兼備した選手だと言えるだろう。

 当然だが、大谷は単純に足が速い。193センチ、95キロ(実際は100kg以上と言われている)の巨躯を完全にコントロールし、スプリントスピードは球界上位の28.8フィートを記録。さらに一塁到達タイム4.08秒は両リーグ4位に位置し、加えて打球も速い。これだけで相手野手へのプレッシャーは相当なものになる。

 今季はこんなシーンがあった。4月14日のカンザスシティ・ロイヤルズ戦、ボテボテの遊ゴロを打った大谷はあえなくアウト……かと思われたが、猛スピードで一塁に到達して内野安打をもぎ取ったのだ。この試合では特大の本塁打も叩き込み、相手地元紙から「身体能力抜群の怪物」という形容をされたほどである。
【動画】平凡な内野ゴロもヒットに! 大谷翔平の脅威の脚力シーンはこちら

 5月3日のタンパベイ・レイズ戦でも、内野安打を相手守備陣がはじいた隙に、果敢に二塁を陥れる好走塁を披露。アウトをヒットに、シングルヒットを二塁打に変えることも、今季の好成績につながっているのだ。
 
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