MLBの後半戦が始まった。前半戦で記録された各選手の個人成績を見ると、長きに渡る球史において、いずれも達成者が1桁という打撃のシーズン記録がいくつか成し遂げられるかもしれない。
そのひとつは、言うまでもなく60本塁打だ。大谷翔平(ロサンゼルス・エンジェルス)は、前半戦に33本塁打を記録した。実に2.7試合に1本塁打という驚異的なペースだ。
仮に後半戦の73試合でも同様のペースを維持できれば、シーズン合計はちょうど60本に達し、2001年のバリー・ボンズ(73本)とサミー・ソーサ(64本)以来、史上9人目の達成者となる。大谷が勝負を避けられる打席を減らし、本塁打を打つ機会を増やすという点で、すぐ後ろを打つ打者の調子もカギを握りそうだ。
ア・リーグの大谷と同じように、ナ・リーグでMVPレースの先頭を走るフェルナンド・タティースJr.(パドレス)は、06年のアルフォンソ・ソリアーノ以来、史上5人目となる40-40(40本塁打&40盗塁)の期待がかかる。
前半戦は28本塁打&20盗塁。40盗塁到達は厳しいようにも思えるが、タティースJr.は前半戦の93試合中19試合に欠場しながら、20盗塁を記録した。後半戦にフル出場すれば、今シーズンの失敗が2度だけという盗塁成功率も高さを考えても、あと20盗塁は必ずしも無理なぺースではない。事実、後半戦はすでに2試合続けて盗塁を決めている。
一方、本数は大谷の場合と同じながら、ニック・カステヤノス(レッズ)が達成可能なのは、シーズン60二塁打だ。一見、本塁打よりは格が落ちるように思えるが、実は稀少性では上回る。これまでの達成者は6人。しかも、1936年のジョー・メドウィック(64本)とチャーリー・ゲーリンジャー(60本)を最後に現れていない。カステヤノスが達成すれば、実に85年ぶりの快挙となるのだ。
レッズは前半戦に90試合を行い、カステヤノスは29本の二塁打を放った。後半戦の72試合で31本はかなりハードルが高そうだが、2年前には58二塁打を記録している。この年の後半戦は、トレードを挟んでタイガースとカブスでプレーし、計68試合に出場して29本の二塁打を放った。同様のペースを72試合に換算すると、約30.7本。ギリギリ達成できるかどうか、という数字なので、なおさら応援したい。
なお、それぞれの記録で数値を5ずつ減らした55本塁打、35-35、二塁打55本の達成者は、それぞれ、19人、20人、24人となる。いずれも20人前後で、素晴らしい記録ではあるものの球史にその名が刻まれる大記録、とまではいかない印象だ。3人とも、怪我なく後半戦を過ごし、大記録を達成することを期待したい。
文●宇根夏樹
【著者プロフィール】
うね・なつき/1968年生まれ。三重県出身。『スラッガー』元編集長。現在はフリーライターとして『スラッガー』やYahoo! 個人ニュースなどに寄稿。著書に『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。
そのひとつは、言うまでもなく60本塁打だ。大谷翔平(ロサンゼルス・エンジェルス)は、前半戦に33本塁打を記録した。実に2.7試合に1本塁打という驚異的なペースだ。
仮に後半戦の73試合でも同様のペースを維持できれば、シーズン合計はちょうど60本に達し、2001年のバリー・ボンズ(73本)とサミー・ソーサ(64本)以来、史上9人目の達成者となる。大谷が勝負を避けられる打席を減らし、本塁打を打つ機会を増やすという点で、すぐ後ろを打つ打者の調子もカギを握りそうだ。
ア・リーグの大谷と同じように、ナ・リーグでMVPレースの先頭を走るフェルナンド・タティースJr.(パドレス)は、06年のアルフォンソ・ソリアーノ以来、史上5人目となる40-40(40本塁打&40盗塁)の期待がかかる。
前半戦は28本塁打&20盗塁。40盗塁到達は厳しいようにも思えるが、タティースJr.は前半戦の93試合中19試合に欠場しながら、20盗塁を記録した。後半戦にフル出場すれば、今シーズンの失敗が2度だけという盗塁成功率も高さを考えても、あと20盗塁は必ずしも無理なぺースではない。事実、後半戦はすでに2試合続けて盗塁を決めている。
一方、本数は大谷の場合と同じながら、ニック・カステヤノス(レッズ)が達成可能なのは、シーズン60二塁打だ。一見、本塁打よりは格が落ちるように思えるが、実は稀少性では上回る。これまでの達成者は6人。しかも、1936年のジョー・メドウィック(64本)とチャーリー・ゲーリンジャー(60本)を最後に現れていない。カステヤノスが達成すれば、実に85年ぶりの快挙となるのだ。
レッズは前半戦に90試合を行い、カステヤノスは29本の二塁打を放った。後半戦の72試合で31本はかなりハードルが高そうだが、2年前には58二塁打を記録している。この年の後半戦は、トレードを挟んでタイガースとカブスでプレーし、計68試合に出場して29本の二塁打を放った。同様のペースを72試合に換算すると、約30.7本。ギリギリ達成できるかどうか、という数字なので、なおさら応援したい。
なお、それぞれの記録で数値を5ずつ減らした55本塁打、35-35、二塁打55本の達成者は、それぞれ、19人、20人、24人となる。いずれも20人前後で、素晴らしい記録ではあるものの球史にその名が刻まれる大記録、とまではいかない印象だ。3人とも、怪我なく後半戦を過ごし、大記録を達成することを期待したい。
文●宇根夏樹
【著者プロフィール】
うね・なつき/1968年生まれ。三重県出身。『スラッガー』元編集長。現在はフリーライターとして『スラッガー』やYahoo! 個人ニュースなどに寄稿。著書に『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。