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「これはアメリカン・ドリームの象徴だ」スピードスケートから野球へ異色の転身。アメリカ代表エディ・アルバレスが史上初の快挙へ挑む【東京五輪】

SLUGGER編集部

2021.07.25

スケート靴をスパイクに履き替え、五輪の舞台に戻ってきたアルバレス。本人いわく「ショートトラック、もしくはショートストップで代表のジャージを着る」。(C)Getty Images

スケート靴をスパイクに履き替え、五輪の舞台に戻ってきたアルバレス。本人いわく「ショートトラック、もしくはショートストップで代表のジャージを着る」。(C)Getty Images

 今回の五輪野球アメリカ代表には、タイラー・オースティン(DeNA)やスコット・マクガフ(ヤクルト)、ニック・マルティネス(ソフトバンク)ら日本のファンにも馴染み深い顔に混じって、一人異色の選手がいる。マーリンズ傘下3Aから参加している内野手のエディ・アルバレスだ。

 アルバレスは今回の代表チームで唯一の“メダリスト”だ。といっても、野球ではない。それどころか、夏季五輪で行なわれる他の種目でもない。何と彼は、2014年のソチ冬季五輪ショートトラックスピードスケート5000mリレーで銀メダルを獲得しているのだ。

 キューバ系移民の子として生まれたアルバレスは、常夏のフロリダ州マイアミで生まれ育った。このため、当初はスケートではなくローラーブレードで才能を示し、7歳の時にスピードスケートへスカウトされた。高校時代は一時野球の方に集中したが、オリンピック出場を目標に再びスケートへと戻っている。

 キューバ系アメリカ人として初めてスピードスケート代表に選ばれたソチ五輪では、ショートトラック5000mリレーで一時トップに立つ見事な滑りを見せ、最終的には優勝したロシアにわずか0.27秒差という死闘の末、銀メダルをつかみ取った。
 
 念願のメダル獲得を果たしたアルバレスは、五輪終了直後に野球への本格転向を表明。ホワイトソックスとマイナー契約を結んだ。元スピードスケーターらしく(?)、15年にはマイナーで53盗塁を記録するなど俊足を発揮。19年にトレードでマーリンズに移り、昨年30歳にしてメジャーデビューを果たした。

 アメリカでは複数のスポーツをかけ持ちする選手は珍しくないが、彼のように夏季競技と冬季競技を両方プレーする選手は極めて珍しい。アルバレス本人もスピードスケートと野球の類似性について問われ、「唯一の共通点は、トラックもベースランニングも左回りってところかな。2つの競技はほとんど似ていないよ」と答えている。

 これまでに夏季と冬季の五輪両方に出場した選手は136人いるが、掛け持ちの片方が野球だったのはアルバレスただ一人。それほどに縁遠いスポーツでともに五輪出場を果たした万能性は特筆すべきだろう。

 また、今大会の開会式では、野球選手としては初めてアメリカ選手団の旗手に選ばれた。このことを伝えられたアルバレスは思わず号泣。自身のインスタグラムで「単なる個人的な業績以上のものを感じている。これはアメリカン・ドリームの象徴だ」と心境を綴った。

 これまで、夏季五輪と冬季五輪の両方でメダルを獲得したアスリートはわずか5人。だが前述の通り、スピードスケートと野球の組み合わせはこれまでに一人もおらず、いわばアルバレスは史上初の快挙を目指していることになる。その第一歩となる戦いは7月30日、アメリカ代表はイスラエル代表と対戦する。

構成●SLUGGER編集部
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