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【杉浦大介のNYレポート】期待外れの戦いが続くヤンキースはトレード・デッドラインでどう動く?<SLUGGER>

杉浦大介

2021.07.28

不甲斐ない戦いぶりに、ファンからはブーン監督の解任を求める声も出ている。(C)Getty Images

「今季のヤンキースは呪われている」――地元紙『ザ・スター・レッジャー』で健筆を振るうベテランコラムニストのボブ・クラピッシュは7月中旬、自身のコラムでそんな風に記していた。いかにもアメリカの記者らしい大袈裟な表現だが、ヤンキースファンはため息とともに肯くかもしれない。多くの離脱者と誤算に見舞われてきたヤンキースとのその支持者にとって、今季は近年最大級に残念なシーズンになっているからだ。

 7月26日終了時点で、51勝47敗で地区3位。首位に立つ宿敵レッドソックスには直接対決で3勝10敗と大きく負け越していることが響いて8ゲーム差、2位レイズにも3.5ゲーム差をつけられている。開幕前はリーグ優勝候補筆頭に挙げられていたことを思い返せば、期待外れとしか言いようがない。

「つらい負けだ。乗り越えなければいけないが、本当につらい。この1ヵ月半の間、多くの厳しい負けを経験してきた」。25日のレッドソックス戦後、アーロン・ブーン監督はそう声を絞り出したが、この日の負け方は今季を象徴していた。8回まで先発ドミンゴ・ヘルマンがノーヒッターを続け、4対0とリード。しかし、8回裏に初安打を許すと、その後の継投が失敗して一挙に5点を許し、痛恨の逆転負けを喫した。22日には、同じくレッドソックス戦で1イニング4暴投という信じられないミスでサヨナラ負けしている。
 
 今季、ブルペンが打たれて敗れたゲームは25日で19試合目、セーブ失敗は14度目。無惨な黒星の後、ヤンキースファンのイライラは頂点に達した感がある。この試合を終え、ソーシャルメディア上では「ブーン監督をクビにするべきだ」という意見が、これまで以上に多く見受けられるようになった。

 不振時に非難の矛先が監督に向くのはビッグマーケット球団の宿命だが、ファンの憤りもやむを得ないと感じられる部分もある。以前からブーン監督の采配はデータ偏重に過ぎるという指摘がなされている。実際、硬直的な判断が相次ぐ継投失敗の一因であると感じられるのは事実だ。

 データ分析を重視し過ぎることへの批判はフロントにも向いている。7月中旬、『ESPN.com』のバスター・オルニーは自身のコラム内でこう記していた。

「(ブライアン・)キャッシュマンGMはデータに依存しすぎているのではないか。ヤンキー・スタジアムは旧スタジアムに比べて右打者に優位という分析があるが、今のヤンキースはあまりに右打者ばかりのため、相手チームの終盤の継投を容易にしている」