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MLB

実に2年ぶりに本拠地トロントへ帰還!“ジプシー・ブルージェイズ”の長き流浪の旅路を振り返る<SLUGGER>

宇根夏樹

2021.08.03

ロジャース・センターは1989年開場。当初はスカイドームという名称で、世界初の稼働屋根式スタジアムだった。(C)Getty Images

ロジャース・センターは1989年開場。当初はスカイドームという名称で、世界初の稼働屋根式スタジアムだった。(C)Getty Images

 7月30日、ブルージェイズは2年ぶりに本拠地のロジャース・センターへ戻ってきた。この球場でプレーしたのは2019年のシーズン最終戦、9月29日以来のことだ。新型コロナウイルスのパンデミックにより、昨シーズンと今シーズンの7月21日まで、ブルージェイズは他の球場を仮の“ホーム”としてきた。

 ロジャース・センターが建っているのは、カナダのオンタリオ州トロントだ。30球団で唯一、ブルージェイズはアメリカ国外に本拠を構えるチーム。昨年のサマー・キャンプはロジャース・センターで行ったものの、ブルージェイズとビジターのチームがアメリカとカナダを行き来することで新型コロナウイルスの感染リスクが高まるとのカナダ政府の判断で試合開催の許可が下りなかった。

 一時はパイレーツの本拠地PNCパークや、オリオールズのオリオール・パーク・アット・カムデンヤーズに“居候”する案も浮上したが、結局実現することはなかった。「すべてのホームゲームを対戦相手の本拠地で行なう」というアクロバティックな可能性も取り沙汰された末に、傘下の3A球団が本拠とするニューヨーク州バッファローのサーレン・フィールドでホームゲームを開催した。
 
 今シーズンは、バッファローの春先の寒さを考慮して、4月と5月はスプリング・トレーニングを行なっているフロリダ州ダニーディンのTBボールパークでホームゲームをこなし、6月から再びバッファロー。7月半ばに入ってようやくロジャース・センターの使用が許可されたため、1970年代の“ジプシーロッテ”ばりの流浪を経て、ようやくホームに帰ってこられたというわけだ。

 本拠地帰還がかなった7月30日時点で、ブルージェイズは52勝48敗で地区4位。第2ワイルド・カードまでは4.5ゲーム差で、ポストシーズン進出圏内にぎりぎり踏みとどまっている状態だった。奇しくもこの日はトレード・デッドラインだったが、ブルージェイズは積極的に補強を展開。移籍市場の目玉の一人だった先発投手のホゼ・ベリオスに加え、昨季セーブ王のブラッド・ハンド、リリーフのホアキム・ソリアも獲得して投手陣の底上げに成功した。

 トロントへの“帰郷”と補強の効果で勢いがついたのか、同日から8月1日までのロイヤルズ3連戦をスウィープ。トロントのファンの応援を背に、ブルージェイズの逆襲がいよいよ始まりそうだ。

文●宇根夏樹

【著者プロフィール】
うね・なつき/1968年生まれ。三重県出身。『スラッガー』元編集長。現在はフリーライターとして『スラッガー』やYahoo! 個人ニュースなどに寄稿。著書に『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。
 
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