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侍ジャパンに負けたアメリカで野球衰退の危機感。選手やファンが“スター不在”に意見「永遠にマイナースポーツだ」【東京五輪】

THE DIGEST編集部

2021.08.08

フレイジャー(25番)のように全盛期を過ぎた選手を中心に構成されたアメリカ。それで決勝進出は立派とも言えるが、やはり国内では辛辣な声が相次いだ。(C)Getty Images

 8月7日、東京五輪・野球競技の決勝が横浜スタジアムで行なわれ、日本がアメリカに2対0で勝利。正式競技となった1992年のバルセロナ大会以降では、初の金メダルを獲得した。

 5回裏に8番・村上宗隆(ヤクルト)のソロホームランで先制した侍ジャパンは、このリードを、先発の森下暢仁(広島)以下、千賀滉大(ソフトバンク)、伊藤大海(日本ハム)、岩崎優(阪神)、栗林良吏(広島)の続投で守りきり、頂点に輝いた。

 野球がふたたび種目から抹消されるパリ五輪を前に、ホスト国としての意地を見せつけた侍ジャパン。一方で"野球の母国"アメリカでは、決勝で喫した敗北に危機感を募らせる声も上がっている。

 試合後、米スポーツ専門放送局『ESPN』は、「五輪においてアメリカでは、体操、水泳、陸上競技のスター選手に注目が集まり、野球の位置づけは付け足しのようなものだった」と国内の実情を分析。さらに日本との"本気度"の違いも指摘した。

「日本は国内の両リーグにおけるベストな選手たちを(五輪で)プレーさせるためにプロ野球の日程を中断してまで"オールスターチーム"を作った。一方でアメリカは古参選手やマイナーリーグによる寄せ集めのロースターだった」
 
 MLBならびにメジャー球団は、今五輪の選手派遣に関して、早々にネガティブな声を上げた。米スポーツ専門メディア『theScore』は、「選手が代表戦で怪我をするリスクを恐れて、MLB幹部はオリンピックに参加するコンセプトを嘲笑。多くの球団のGMたちも拒否した」と伝えている。

 たしかに真っ当な意見ではある。彼らは、大型契約を締結しているスター選手たちを、長期に及ぶ怪我のリスクに晒したくないのだろう。

 だが、一部の選手たちからは反対意見も聞こえてくる。2020年に『ESPN』のインタビューに応じたブライス・ハーパー(フィラデルフィア・フィリーズ)は、「野球というスポーツをできるだけ発展させたいと望みながら、たった2週間分の金を失いたくないというだけの理由で、僕たちがオリンピックに出場することを許可しない? まったく馬鹿げている」と上層部の考えを真っ向から否定した。

 さらにファンも超一流スターの国際大会への積極参戦を求めている。東京五輪の決勝後、MLB公式ツイッターが発信した大会の終了を知らせるツイートには、「野球は、こうした大会に最高の選手を出せない限り、永遠にマイナースポーツのままだ」「マイナーリーガーではなくアメリカ最高の選手たちによるオリンピックが見たい」「戦力外の選手やマイナーリーガーたちで作ったチームがアメリカを名乗るのか?」といった辛辣なリプライが飛んだ。

 こうした声を受け、MLBは何を想うのか。2028年に行なわれるロサンゼルス五輪では、野球競技の復活も囁かれているだけに、彼らがスターを参戦させるかに注目が集まりそうだ。

構成●THE DIGEST編集部