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高校野球

エースを立ち直らせ、打っては決勝弾。「グラウンドの指揮官」として躍動した京都国際・中川<SLUGGER>

氏原英明

2021.08.20

2回、レフトへホームランを放った中川。結局、この1点が決勝点となって京都国際が前橋育英を下した。写真:塚本凜平(THE DIGEST写真部)

2回、レフトへホームランを放った中川。結局、この1点が決勝点となって京都国際が前橋育英を下した。写真:塚本凜平(THE DIGEST写真部)

 まさにグラウンドの中の指揮官だった。
 
 午前中の豪雨により、予定から2時間遅れて始まった第3試合は京都国際が1対0で前橋育英に勝利。2回に飛び出した捕手の中川勇斗のレフトへの本塁打での1点を守り切っての見事な零封劇だった。

「試合間隔が空いてしまって打線が思うようなスウィングできなかったんですけど、中川が浮いたスライダーを1球で仕留めてくれた。守る方では相手をしっかり観察して投げてくれた」

 試合後の京都国際・小牧憲継監督はそう振り返った。

 監督の言葉からは勝利への安堵の気持ちと、待たされた試合を勝ち切る難しさを感じることができる。

 おそらく、これは京都国際だけではなく、これから試合に登場する多くのチームが体験することだろう。

 これまで6度の順延があった今大会は試合の調整が難しい。「相手も条件が同じ」なのは言わずもがなだが、どのチームも試合勘との戦いに苦労している。
 
 夏の大会はセンバツと違って、地区大会に勝って甲子園に出場している。本来は、地区大会を勝ち抜いた感覚のまま大会を戦えるのだが、これだけ日程が空いてしまうと、調整はままならない。

 5回裏の攻撃中で豪雨のためノーゲームとなった近江対日大東北の第1試合も試合勘の鈍りを垣間見せたが、15時にプレーボールがかかったこのゲームも同じく、両軍が感覚のズレに苦労する姿が見られた。

 初回、前橋育英の1番打者・横倉拓実が三遊間をしぶとく破って出塁。続く2番の佐藤大我が送りバントをややプッシュ気味に試みると、京都国際の先発・森下瑠大がグラブに収められず、無死一、二塁となった。

 ところが、3番・岡田啓吾はボール気味のスライダーを空振り三振。この時、京都国際の捕手・中川はボールを弾くのだが、岡田は振り逃げと勘違いして一塁に走り出している。4番・皆川岳飛には森下の制球が定まらず、ストレートの四球で満塁となった。

 前橋育英にすれば絶好のチャンスだったが、5番・野村慶はカウント3-1からのインコース高めのボール球に思わず手を出してしまい、最後はアウトコースのストレートで見逃し三振。6番の西沢大希も三振に倒れて、無得点で終わった。
 
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