高校野球

雨の順延と“西高東低”だけじゃない。今年の甲子園ならではの特徴とは?<SLUGGER>

THE DIGEST編集部

2021.08.26

ベスト8に東日本勢はゼロ、近畿勢は5校と明暗がくっきり分かれた。写真:滝川敏之

 2年ぶりの開催となった夏の甲子園。当初は8月25日が決勝戦の予定だったが、連日の雨で史上最多となる7度の順延を余儀なくされ、ようやくベスト8が出揃った。宮崎商(宮崎)、東北学院(宮城)の2校が部員の新型コロナウイルス感染で大会途中に出場辞退となっており、あらゆる意味で歴史に残る大会となったことは間違いない。

 そんな中でここまで勝ち残ってきたチームを見てみると、東日本の学校は0と完全に西高東低となっている。また西日本の中でも近畿勢が5校勝ち残っているのが大きな特徴と言えるが、これも長雨による度重なる順延が影響していることは間違いないだろう。

 近畿圏外から甲子園に出場しているチームは大会期間中、兵庫や大阪の学校のグラウンドを借りて練習するのが一般的だが、室内練習場のある学校ばかりではなく、雨でグラウンドが使えないと練習できないケースも多い。1日程度であればそれほど影響はないかもしれないが、ここまで何日も雨が続くと、調整は当然難しくなってくる。
 作新学院(栃木)が西宮市内のバッティングセンターで練習したという報道も出ていたが、普段の練習環境に比べるとかなり不足していたチームも多かっただろう。一方で近畿のチームは大会期間の宿舎こそ決まっているものの、練習に関しては基本的に自校の施設で行うことができるため、雨天中止が続けば続くほど環境面のアドバンテージは大きくなったはずだ。

 もう一つの特徴は近年と比べると強打で圧倒するような勝ち方が減っているという点だ。一昨年の大会を見ても3回戦までの41試合で2ケタ得点を挙げた試合があったチームは履正社(大阪)、鳴門(徳島)、仙台育英(宮城)、関東第一(東東京)、八戸学院光星(青森)、敦賀気比(福井)、作新学院(栃木)と7校を数えたが、今大会は同じ3回戦終了時点では智弁学園(奈良)、松商学園(長野)、高松商(香川)の3校しかなく、松商学園と高松商は続く試合では打線が抑え込まれて敗れている。

 最近の高校野球は"食トレ"とも言われる栄養管理とウエイト・トレーニングでとにかく体を大きくして、金属バットの反発の強さを生かしたパワーで打ち勝つ野球が目立っていたが、今年は春のセンバツでもなかなかホームランが出ないなど打者が苦しんでいる傾向が続いている。
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