甲子園大会真っ只中に上梓された書籍『甲子園は通過点です』(新潮社)は、2018年に同じく新潮社から発売された『甲子園という病』で話題を呼んだ氏原英明氏の筆によるもの。高校野球に起こった新たな変革の波を描いている。独占インタビュー後編では、高校野球の変革を追い続けてきた同氏が、この夏の甲子園大会をどう見ていたのかについて聞いた。
――今年の甲子園は雨の順延が多く、結果的に過密日程になってしまったことを批判する声も出ています。氏原さんはどうご覧になりましたか?
「実は、今大会の運営ルールに関しては、高野連も進歩したところを見せているんです。『新型コロナウイルス感染対策ガイドライン』では、2回戦以降も試合開始2時間前まではベンチ入りメンバーの変更も可能になっていたし、順延したことで阪神タイガースにかけあって、同日開催もOKになってましたしね。
ただ、全国大会のゴールは何なのか、高野連は何を目指しているのかということを考えた時に、おそらく優先順位の1番目は、『優勝校を決める』なんですよ。大会をまっとうするのが彼らの一番の目的なんです。でも、僕は一番の目的は『選手が甲子園の舞台で怪我なくプレーする』ことだと思っています。
高野連も当初、日程を組んだ時点では選手の健康面に配慮していたはずです。実際、雨で順延が続く前は休養日がたくさん設けられていました。3回戦の後と準々決勝の後、準決勝と決勝の間にそれぞれあった。これは僕が3年前から訴えてきたことが形になっていると感じました。
でも、雨が続いたことでその休養日もほとんど潰してしまった。そこが問題だと思います。僕は当初、選択肢の一つとして、大会打ち切りもアリだと思っていました。決勝戦はこれ以上伸ばせないという日程を決めて、そこに休養日も当てはめて、完遂できないところで終わると思っていた。でも、阪神が同日開催していいと譲歩してくれたので、それを最大限に利用すべきだったと思います。一度各校を地元に帰らせて、準決勝や決勝は1週間明けて実施するとか……そういったやり方を考えてほしかったと思いますね。
――高野連について、本では「改革に対してとりあえず否定的なリアクションをする側」として描かれていました。選手や指導者だけでなく、全体を統括する高野連の改革も今後は必要になってくるのでしょうか?
「正直なところ、高野連に変革を求めるよりも、指導者や選手の側がどんどん変わっていく方が早いと思います。高野連が日程に配慮してくれないのであれば、指導者の側が戦力になる投手を複数育てて、選手を休ませながら勝っていけるチームを作ればいい。だからこの本では、変革を行なう人たちにスポットを当てているんです。こういう人たちにみんなが続いていけばいいんですよ。
そうやって独自の動きを広げていって、『まだ先発完投させてるの?』とか『100球投げても交代させないの?』という風に価値観そのものを変えていけばいい。みんなが球数は制限するのが当たり前というマインドになれば、そもそも球数制限のルールなんか必要ないんですよ。みんなが“甲子園絶対主義”から“甲子園は通過点”のマインドになって選手を育ててほしいと思いますね。
なので、僕は保護者にもこの本を読んでほしいと思っています。実際に最近、保護者の方から『野球をやっている息子をどこの高校に行かせたらいいですか?』と、よく相談を受けるんです。その時にこの本を読んでもらって、参考にしてほしいと思いますね」
――今年の甲子園は雨の順延が多く、結果的に過密日程になってしまったことを批判する声も出ています。氏原さんはどうご覧になりましたか?
「実は、今大会の運営ルールに関しては、高野連も進歩したところを見せているんです。『新型コロナウイルス感染対策ガイドライン』では、2回戦以降も試合開始2時間前まではベンチ入りメンバーの変更も可能になっていたし、順延したことで阪神タイガースにかけあって、同日開催もOKになってましたしね。
ただ、全国大会のゴールは何なのか、高野連は何を目指しているのかということを考えた時に、おそらく優先順位の1番目は、『優勝校を決める』なんですよ。大会をまっとうするのが彼らの一番の目的なんです。でも、僕は一番の目的は『選手が甲子園の舞台で怪我なくプレーする』ことだと思っています。
高野連も当初、日程を組んだ時点では選手の健康面に配慮していたはずです。実際、雨で順延が続く前は休養日がたくさん設けられていました。3回戦の後と準々決勝の後、準決勝と決勝の間にそれぞれあった。これは僕が3年前から訴えてきたことが形になっていると感じました。
でも、雨が続いたことでその休養日もほとんど潰してしまった。そこが問題だと思います。僕は当初、選択肢の一つとして、大会打ち切りもアリだと思っていました。決勝戦はこれ以上伸ばせないという日程を決めて、そこに休養日も当てはめて、完遂できないところで終わると思っていた。でも、阪神が同日開催していいと譲歩してくれたので、それを最大限に利用すべきだったと思います。一度各校を地元に帰らせて、準決勝や決勝は1週間明けて実施するとか……そういったやり方を考えてほしかったと思いますね。
――高野連について、本では「改革に対してとりあえず否定的なリアクションをする側」として描かれていました。選手や指導者だけでなく、全体を統括する高野連の改革も今後は必要になってくるのでしょうか?
「正直なところ、高野連に変革を求めるよりも、指導者や選手の側がどんどん変わっていく方が早いと思います。高野連が日程に配慮してくれないのであれば、指導者の側が戦力になる投手を複数育てて、選手を休ませながら勝っていけるチームを作ればいい。だからこの本では、変革を行なう人たちにスポットを当てているんです。こういう人たちにみんなが続いていけばいいんですよ。
そうやって独自の動きを広げていって、『まだ先発完投させてるの?』とか『100球投げても交代させないの?』という風に価値観そのものを変えていけばいい。みんなが球数は制限するのが当たり前というマインドになれば、そもそも球数制限のルールなんか必要ないんですよ。みんなが“甲子園絶対主義”から“甲子園は通過点”のマインドになって選手を育ててほしいと思いますね。
なので、僕は保護者にもこの本を読んでほしいと思っています。実際に最近、保護者の方から『野球をやっている息子をどこの高校に行かせたらいいですか?』と、よく相談を受けるんです。その時にこの本を読んでもらって、参考にしてほしいと思いますね」