――選手ファーストの立場で考えれば甲子園が「通過点」であるべきですが、長年、高校野球を取材してこられた氏原さんとしては、甲子園の意義深さも感じておられると思います。これからの「甲子園」は、球児にとってどのような存在であるべきだと考えていますか?
「甲子園がこれからどうなるべきか? と言えば、原点に戻るべきだと思います。甲子園は、自分が身につけた技量を出し合うだけの場所です。負けたら自分の努力が足りなかった、また努力しようというだけのことで、甲子園で負けたら絶望してもう野球をやらない、というのは違うと思います。
甲子園でミスをすると、『練習していない』という意見が出ますが、それで全然いいんですよ。それが自分の今の実力なんですから。むしろ、ミスをしないことだけにこだわって練習すると、どんどん野球のスタイルが小さくなってしまう。野球の中のほんの一部のプレーでしかないのに、三本間で挟まれてアウトにならずにホームインするような練習ばかりしてしまう。もっと重要なのはヒットを打つことや、ホームランを打つこと、三振を取ることですよね。
今の甲子園をビジネス用語でいうなら“コモディティ化”、平準化です。みんなが同じようなチームを作らざるを得ない。みんなが口をそろえて“つなぎの野球”と言う。でも、僕は『ホームランを狙いに行かせました』という監督が出てきてほしいと思っています。
つまり、“甲子園のための野球”ではなくて、“野球を上手くするための野球”、“野球を楽しみを知るための野球”に転換して、上手い高校、強い高校が集まっている甲子園の舞台で戦える喜びを感じて、楽しんでほしいと思いますね。甲子園は素晴らしい舞台ですが、そこだけを目指すのはやめましょう、ということです」
今夏の甲子園では、『甲子園は通過点です』でもその取り組みが取り上げられた中谷仁監督率いる智弁和歌山が、見事に全国制覇を達成した。選手ファーストを貫きながらも見事に結果を出し、改めて全国に範を示した。これも氏原氏がいうように、高校野球が変革してきている兆しだろう。今後どのような“変革”がもたらされるのかを考えるとワクワクしてくる。これからの高校野球に改めて注目していきたい。
【PROFILE】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。
「甲子園がこれからどうなるべきか? と言えば、原点に戻るべきだと思います。甲子園は、自分が身につけた技量を出し合うだけの場所です。負けたら自分の努力が足りなかった、また努力しようというだけのことで、甲子園で負けたら絶望してもう野球をやらない、というのは違うと思います。
甲子園でミスをすると、『練習していない』という意見が出ますが、それで全然いいんですよ。それが自分の今の実力なんですから。むしろ、ミスをしないことだけにこだわって練習すると、どんどん野球のスタイルが小さくなってしまう。野球の中のほんの一部のプレーでしかないのに、三本間で挟まれてアウトにならずにホームインするような練習ばかりしてしまう。もっと重要なのはヒットを打つことや、ホームランを打つこと、三振を取ることですよね。
今の甲子園をビジネス用語でいうなら“コモディティ化”、平準化です。みんなが同じようなチームを作らざるを得ない。みんなが口をそろえて“つなぎの野球”と言う。でも、僕は『ホームランを狙いに行かせました』という監督が出てきてほしいと思っています。
つまり、“甲子園のための野球”ではなくて、“野球を上手くするための野球”、“野球を楽しみを知るための野球”に転換して、上手い高校、強い高校が集まっている甲子園の舞台で戦える喜びを感じて、楽しんでほしいと思いますね。甲子園は素晴らしい舞台ですが、そこだけを目指すのはやめましょう、ということです」
今夏の甲子園では、『甲子園は通過点です』でもその取り組みが取り上げられた中谷仁監督率いる智弁和歌山が、見事に全国制覇を達成した。選手ファーストを貫きながらも見事に結果を出し、改めて全国に範を示した。これも氏原氏がいうように、高校野球が変革してきている兆しだろう。今後どのような“変革”がもたらされるのかを考えるとワクワクしてくる。これからの高校野球に改めて注目していきたい。
【PROFILE】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。