プロ野球

【ドラフト候補タイプ別診断:「ダイヤの原石」】故障明けながら底知れぬ潜在能力を誇る長身左腕・羽田に注目!<SLUGGER>

西尾典文

2021.10.07

あのランディ・ジョンソンにも似たフォームの羽田。潜在能力の高さが大きな魅力だ。写真:西尾典文

 いよいよ11日に迫ったプロ野球のドラフト会議。今年も多くの選手に注目が集まるなか、テーマ別に有力候補を紹介していく。今回のテーマは「ダイヤの原石」だ。

 今年の候補のなかで、このテーマに最も当てはまる選手と言えば羽田慎之介(八王子高)になるだろう。19センチの長身でサイドに近いスリークォーターから投げ込むストレートは最速149キロをマーク。そのピッチングスタイルは往年の名投手ランディ・ジョンソン(元マリナーズなど)を彷彿とさせるものがある。これだけの長身でありながら、ストライクをとるのに苦労するようなことはなく、一定の制球力があるのも長所だ。

 ただ、春は故障明けでわずか2試合、2イニングの登板に終わり、夏も肘を痛めて結局登板がないまま高校生活を終えた。故障は深刻なものではないため、変わらずプロからの注目度は高いが、どの程度の順位で評価されるかは非常に読みづらい。

 高校生の投手でもう一人面白いのが黒田将矢(八戸工大一高)だ。188センチの長身でありながらフォームに躍動感があり、春の県大会では最速149キロもマークしている。まだまだ安定感には乏しく、力いっぱい投げているだけという印象も受けるが、長いリーチでこれだけ腕が振れるというのは何物にも代えがたい持ち味だ。夏の青森大会準々決勝には12球団のスカウトが集結しており、展開次第では高い順位での指名も期待できるだろう。
 
 大学生では松井友飛(金沢学院大)、社会人では柴田大地(日本通運)の両右腕が面白い。松井は高校時代公式戦未勝利ながら大学で力をつけた大型右腕。まだコントロールやスタミナには課題が残るものの、高い位置から投げ下ろすストレートは短いイニングであればコンスタントに150キロ前後をマークする。良さを残したまま上手くまとまりが出てくれば楽しみな存在となりそうだ。

 一方の柴田は肘の手術もあって大学時代は公式戦登板なし。それでも素材の良さが評価されて日本通運に進み、今年の夏にはオープン戦で最速156キロをマークした。力任せではなく、バランスの良いフォームも特長。もう1年実績を残してからという声もあるが、今年指名を検討している球団も多いはずだ。

 野手では中山誠吾(白鴎大)を挙げたい。190センチ、95キロという日本人離れした体格で、確実性には課題が残るが打球の速さには目を見張るものがある。またこれだけの大型でありながらショートも守れるというのも魅力だ。スケールの大きさは大学生野手の中でも屈指だけに、ぜひプロで鍛えてもらいたい素材だ。

文●西尾典文

【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間約300試合を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。