「The King Is Coming」――
ヤフオクドーム(現PayPayドーム)に鳴り響くNewboysの曲、巨大ビジョンに浮かぶ「THE KING OF CLOSER」の文字。 “最強”ソフトバンクの守護神・デニス・サファテがマウンドに登場するその一幕は、ホークスファンには絶対的な安心感を、他球団のファンには絶望感を与える瞬間だった。
セーブ王に3回輝き、2017年には日本新記録のシーズン54セーブを記録してMVPを受賞。通算でも234個のセーブを積み上げた名クローザーは11月30日、現役を引退することを表明した。18年に股関節を痛め、人工股関節を入れながらも現役復帰を目指したが、ここ3年間はマウンドに上がることができず、3年20億円超の大型契約満了を期にユニフォームを脱ぐことを決断したのだった。
これまで、日本プロ野球には数々の絶対的守護神が君臨してきた。歴代最多407セーブを誇る岩瀬仁紀、“大魔神”・佐々木主浩、“火の玉ストレート”・藤川球児……今年はルーキーの栗林良吏(広島)が新人最多タイの37セーブ、防御率0.86という異次元の数字をマーク。東京オリンピックでは胴上げ投手となり、大クローザーへの一歩を踏み出している。
しかしその中でも、全盛期のサファテが残したインパクトは「絶大」という言葉では言い表せないほどだった。通算防御率1.55、WHIP(1イニングあたりに許した走者数)0.89はいずれも300登板以上で歴代1位。中でも印象深いのはやはり、17年の歴史的な“制圧劇”だ。
【動画】唸りを上げる剛速球! サファテ、往年のストレートがこれだ!
5月に家庭の事情で一時帰国しながらも66試合に登板して歴代最多の54セーブ。この年、チームは94勝を挙げたが、57.4%と実に6割近い勝利にサファテが関わっていたことになる。セーブ失敗はわずか1。これは9回無死満塁からの登板で記録したもので、イニングの先頭から投げた試合でのミスはなく、セーブ機会での防御率は0.16と完璧に近い投球だった。
DeNAとの日本シリーズでの投球も圧巻だった。ソフトバンクが3勝2敗と王手をかけて迎えた第6戦では、1点リードされた9回に登板して三者凡退に抑えると、その裏に味方が同点に追いつき、延長10回、11回もマウンドへ上がって無失点。その裏にチームがサヨナラ勝ちを収めて日本一を達成し、外国人選手では53年ぶりとなるシリーズMVPにも輝いた。
全盛期のサファテが投げ込んでいたストレートはまさに「アンヒッタブル」だった。17年は平均球速153.3キロを計時し、空振り率は22.4%。救援投手のリーグ平均が8.3%だったことを考えると、まさに“異次元”の水準にあった。そこに被打率.082の高速フォークも織り交ぜてくるとなれば、打者はもう白旗を掲げるしかない。
「クローザーは最後にチームを勝利に導けばいい」。そうした意見もあるだろう。しかしサファテはただチームを勝利に導くだけでなく、相手に“出塁すらできない”絶望感を与え続けた。
15~17年におけるサファテのWHIPは0.63→0.82→0.67。あの岩瀬のWHIP自己ベストが0.89、佐々木ですら0.70を切ったシーズンはなく、今季の栗林も0.97だったことを考えると、改めてその傑出ぶりが分かるのではないか。
2018年4月15日のロッテ戦、サファテは1点リードの9回に登板して同点に追いつかれてたが、その裏チームが逆転サヨナラ勝ちを収めて白星を手にした。この日を最後に、サファテがマウンドに帰ってくることは二度となかった。
引退の一報を聞き、改めて登場曲『The King Is Coming』を聴きながら目を閉じると、そこには“King Of Closer”の姿が浮かんできた。
構成●SLUGGER編集部
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ヤフオクドーム(現PayPayドーム)に鳴り響くNewboysの曲、巨大ビジョンに浮かぶ「THE KING OF CLOSER」の文字。 “最強”ソフトバンクの守護神・デニス・サファテがマウンドに登場するその一幕は、ホークスファンには絶対的な安心感を、他球団のファンには絶望感を与える瞬間だった。
セーブ王に3回輝き、2017年には日本新記録のシーズン54セーブを記録してMVPを受賞。通算でも234個のセーブを積み上げた名クローザーは11月30日、現役を引退することを表明した。18年に股関節を痛め、人工股関節を入れながらも現役復帰を目指したが、ここ3年間はマウンドに上がることができず、3年20億円超の大型契約満了を期にユニフォームを脱ぐことを決断したのだった。
これまで、日本プロ野球には数々の絶対的守護神が君臨してきた。歴代最多407セーブを誇る岩瀬仁紀、“大魔神”・佐々木主浩、“火の玉ストレート”・藤川球児……今年はルーキーの栗林良吏(広島)が新人最多タイの37セーブ、防御率0.86という異次元の数字をマーク。東京オリンピックでは胴上げ投手となり、大クローザーへの一歩を踏み出している。
しかしその中でも、全盛期のサファテが残したインパクトは「絶大」という言葉では言い表せないほどだった。通算防御率1.55、WHIP(1イニングあたりに許した走者数)0.89はいずれも300登板以上で歴代1位。中でも印象深いのはやはり、17年の歴史的な“制圧劇”だ。
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5月に家庭の事情で一時帰国しながらも66試合に登板して歴代最多の54セーブ。この年、チームは94勝を挙げたが、57.4%と実に6割近い勝利にサファテが関わっていたことになる。セーブ失敗はわずか1。これは9回無死満塁からの登板で記録したもので、イニングの先頭から投げた試合でのミスはなく、セーブ機会での防御率は0.16と完璧に近い投球だった。
DeNAとの日本シリーズでの投球も圧巻だった。ソフトバンクが3勝2敗と王手をかけて迎えた第6戦では、1点リードされた9回に登板して三者凡退に抑えると、その裏に味方が同点に追いつき、延長10回、11回もマウンドへ上がって無失点。その裏にチームがサヨナラ勝ちを収めて日本一を達成し、外国人選手では53年ぶりとなるシリーズMVPにも輝いた。
全盛期のサファテが投げ込んでいたストレートはまさに「アンヒッタブル」だった。17年は平均球速153.3キロを計時し、空振り率は22.4%。救援投手のリーグ平均が8.3%だったことを考えると、まさに“異次元”の水準にあった。そこに被打率.082の高速フォークも織り交ぜてくるとなれば、打者はもう白旗を掲げるしかない。
「クローザーは最後にチームを勝利に導けばいい」。そうした意見もあるだろう。しかしサファテはただチームを勝利に導くだけでなく、相手に“出塁すらできない”絶望感を与え続けた。
15~17年におけるサファテのWHIPは0.63→0.82→0.67。あの岩瀬のWHIP自己ベストが0.89、佐々木ですら0.70を切ったシーズンはなく、今季の栗林も0.97だったことを考えると、改めてその傑出ぶりが分かるのではないか。
2018年4月15日のロッテ戦、サファテは1点リードの9回に登板して同点に追いつかれてたが、その裏チームが逆転サヨナラ勝ちを収めて白星を手にした。この日を最後に、サファテがマウンドに帰ってくることは二度となかった。
引退の一報を聞き、改めて登場曲『The King Is Coming』を聴きながら目を閉じると、そこには“King Of Closer”の姿が浮かんできた。
構成●SLUGGER編集部
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