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通算200勝の“偉大な左腕”ジョン・レスターが現役引退。悪性リンパ腫を乗り越え、ポストシーズンで伝説となった男<SLUGGER>

SLUGGER編集部

2022.01.13

レッドソックスで2回世界一、そしてカブスの呪いも解いた名左腕レスターが現役引退。その偉大なキャリアを振り返る。(C)Getty Images

レッドソックスで2回世界一、そしてカブスの呪いも解いた名左腕レスターが現役引退。その偉大なキャリアを振り返る。(C)Getty Images

 世界一に3度輝き、球界屈指の左腕投手として長年活躍したジョン・レスターが現役引退を表明した。昨季に左腕では史上30人目の通算200勝(117敗)を達成したが、「肉体的に現役を続けるのが難しくなってきた」として今回の決断に至ったという。

 現役16年間でタイトル獲得は2018年の最多勝(18勝)1回だけだったが、引退を受けて「間違いなくレジェンドだった」(ジャレッド・カラービス記者)との声が方々から上がっている。

 02年ドラフト全体57位でレッドソックスに入団したレスターはすぐさま頭角を現し、06年6月10日に22歳でメジャーデビューを果たす。しかしその直後に大きな不運に見舞われた。悪性リンパ腫を発症してしまったのだ。

 普通であれば復帰すらも難しい状況のなか、レスターは懸命なリハビリを重ね、翌年メジャーの舞台へ戻ってくる。そして、ワールドシリーズで第4戦の先発を任されると、6回途中無失点の好投。チームの世界一達成に大きく貢献した。

 この試合に代表されるように、レスターはビッグゲームになればなるほど力を発揮した。ポストシーズンは通算26登板(22先発)で154.0回を投げて9勝7敗、防御率2.51。負け数は多いように感じるかもしれないが、それだけレスターが大事な試合で起用されたことの証でもある。ポストシーズンのシリーズ第1戦、つまり“開幕投手”を任された回数は12を数え、これはクレイトン・カーショウとグレッグ・マダックスを抜いて歴代最多となっている。
 
 その後、13年にもレッドソックスで世界一を経験。翌年夏のアスレティックス移籍を経てFAになったレスターは14年オフ、大きな決断を下した。そして、その決断はレスター自身だけでなく、あるチームの命運をも大きく変えることになる。

 当時、弱小球団だったカブスに6年1億5500万ドルの大型契約で加入したのだ。レッドソックス時代に自分を指名したセオ・エプスティーンがカブスの編成トップを務めていた縁が大きかったが、優れた若手有望株が成長しつつあった当時のカブスを、自分が加入することで自身が底上げできる自信があったという。

 そして実際、その通りになった。カブスは15年に97勝を挙げて8年ぶりのプレーオフ進出を果たすと、翌16年はMLB最多の103勝を挙げて地区優勝。レスター自身も19勝5敗、防御率2.44の好成績で快進撃の原動力となった。そしてプレーオフを迎えると、レスターは大舞台の経験が乏しい若いチームを見事に牽引した。

 地区シリーズでは8回無失点の好投、続くリーグ優勝決定シリーズでも13.0回を2失点に抑えてMVPを受賞。そしてワールドシールズでは、1勝3敗と追い込まれた第5戦で勝利投手となり、第7戦には中2日リリーフ登板。3回1失点にまとめた。レスターの奮闘もあり、カブスはインディアンスを下して実に108年ぶりの頂点に立った。

 普段は温厚だが、ひとたびマウンドに上がれば闘争心をむき出しにした。グラブを口元に構え、正面から鋭く打者を睨みつける姿は、決め球のカット・ファストボールとともにレスターのトレードマークとして多くのファンの印象に残っている。

 その一方で、カブス時代は自腹でプライベートジェットやバスを借り、若い選手をゴルフやコンサートに連れて行くなど、チームリーダーとしても尊敬を集めた。レッドソックスとカブスで通算89回バッテリーを組み、現在はカブスの監督を務めるデビッド・ロスは「ジョンはとてもルーティンを大事にしていた選手で、あらゆることに備えていた。だか、ポストシーズン特有の空気感も受け入れて、自分のパフォーマンスを発揮できる。私がポストシーズンで見てきた選手のなかで、ジョンが最高の選手だと思うよ」

 通算200勝、防御率3.66は、殿堂入りするには少し物足りない印象を受ける。だが実は、「通算200勝&ノーヒッター達成&ワールドシリーズ優勝決定試合での勝利投手」の3要素をすべてクリアした投手は11人のみで、そのうち10人が殿堂入りを果たしている。今後、時間が経過していく中で“再評価”の機運が高まる可能性もある。

 もっとも、レスターにとって殿堂入りするかどうかはさほど重要ではないだろう。同じチームで戦った仲間たち、そしてボストンやシカゴのファンにとって、レスターが永遠のヒーローであることは変わらないのだから。

構成●SLUGGER編集部

【動画】“ビッグゲーム”・レスター! 往年の輝かしい投球をもう一度
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