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プロ野球

佐々木朗希の歴史的なパーフェクト達成の裏で――。日本ハムのドラ1・達孝太の静かなプロデビュー「僕も長く野球をやりたい」<SLUGGER>

氏原英明

2022.04.18

昨年のドラフトで小園健太(DeNA)ら“高校ビッグ3”に次ぐ評価を受けた達が、ついにプロで第一歩を刻んだ。写真:産経新聞社

昨年のドラフトで小園健太(DeNA)ら“高校ビッグ3”に次ぐ評価を受けた達が、ついにプロで第一歩を刻んだ。写真:産経新聞社

 千葉ロッテの佐々木朗希による大記録達成があった数分前、同じ千葉県にて、静かに“プロデビュー”を飾った投手がいた。ふと運命めいたものを感じたものだった。その投手とは佐々木と同じ長身右腕、日本ハムのルーキー・達孝太である。

 4月10日、鎌ヶ谷スタジアムでヤクルトと対戦した日本ハムの二軍チームは、6回から“高卒新人リレー”を展開。昨年のドラフト5位で入団した畔柳亨丞、育成1位の福島蓮に続き、8回からマウンドに上がった達は走者1人を出したものの、ストレートは最速150キロを計測。2死から中山翔太をスライダーで空振り三振に切って取り、上々のデビューを飾ったのだった。

「球速は正直もう少し出るかなと思ったんですけど、甘くなかったですね。ファウルを取れたので、最初の登板にしてはこんなもんじゃないですか」

 達は初登板の感想をそう振り返ったが、150キロに到達したストレートの感触を語るあたりは独特な感性を持っている。

 もともと、天理高校時代の逹は148キロがMAX。150キロは高校野球を引退してから出せるようになったのだが、「1回しか出ていなかったので、あまり誰にも言わないようにしていた」と語る。

 引退後にストレートの最速を更新する投手などそうそうあり得ることではないのだが、その背景には達自身の思考の深さがある。

 高校時代から「メジャーリーガーが目標」と公言してきた達は3年夏までの成果にとらわれていなかった。
 
「夏の大会までの目標を聞かれますけど、僕の野球人生はその後も続くんでね。チームとしての目標は甲子園、全国制覇です。個人としては150キロを出すことですね。夏の大会までに150キロが出なくても、その後もしっかり練習をして、3年のうちに150キロを出したいと思う」

 夏は奈良大会準決勝で敗退し、甲子園には進めなかった。

 その試合で達は5回からマウンドに上がり、1点リードしたまま9回を迎えたが、味方のエラーから出塁を許すと、前進守備の上を行く長打を浴び、さらに中継プレーが遅れる間にランニング本塁打を許してサヨナラ負けを喫した。

 あっけない幕切れだったのものの、達自身はサバサバしたものだった。高校球児は甲子園出場を逃すと、その悔しさに打ちひしがれる。寮生活を送っていた選手たちの多くは地元へ帰るケースが多いなか、達は一人、敗戦の後も寮に残った。

 全国制覇という夢は途絶えてしまったが、今度は150キロ到達という目標への取り組みが始まったのだ。逹は当時、こんな話をしている。

「夏の大会が終わってからが本当の勝負だと僕は思っています。大会までにやらないといけないことも多いので、今はできないことがその後はできる。いろんなトレーニングを考えているので、大会が終わってから楽しみなんです」

 高校野球を引退した後はトレーニングに明け暮れた。試合がないため追い込むような練習はせず、150キロを投げるための練習を積み重ねた。10月、11月と筋力量は多くなり、ある日の練習で152キロを計測したのだった。
 
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