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MLB

猛虎逆襲のキーマンになるか? 阪神新助っ人ウィルカーソンは途方もない“苦労人”。一時は野球を諦めて夜勤労働に従事

THE DIGEST編集部

2022.04.17

メジャーでプレーするまでに苦労を重ねてきたウィルカーソン。彼のキャリアは決して平たんなものではなかった。(C)Getty Images

メジャーでプレーするまでに苦労を重ねてきたウィルカーソン。彼のキャリアは決して平たんなものではなかった。(C)Getty Images

 新助っ人の粘投が、チームの今季初となる連勝を呼び込んだ。

 4月16日に甲子園球場で行なわれた巨人戦で阪神は2-1で勝利。先発したアーロン・ウィルカーソンが6回(90球)を投げ、被安打3、5奪三振、1失点とQS(クオリティースタート)を達成する好投でゲームを作った。
【動画】巨人のクリーンナップをピシャリ! ウィルカーソンの来日初登板シーンをチェック

 ほとんど巨人を寄せ付けなかった。初回の1死一、二塁のピンチを切り抜けたウィルカーソンは、その後もチェンジアップとストレートを高低に投げ分ける巧みなピッチングで相手打線を翻弄。6回に岡本和真にタイムリーヒットを許したが、そこから大崩れはせずに切り抜け、7回から無失点リレーを披露した中継ぎにつないだ。

 矢野燿大監督が「タイガースの大きな力になってくれるピッチャー」と惜しみない賛辞を贈った32歳の右腕だが、ここまでのキャリアは決して平たんなものではない。誰もが羨むようなメジャーリーグとはむしろ真逆の舞台でもがいてきた。

 カンバーランド大学時代の2011年に54イニング連続無失点や26連勝をマークし、トッププロスペクトとして注目を集めたのだが、同年8月に行なったトミー・ジョンの影響もあってまさかのドラフト漏れ。米紙『Boston Herald』が2016年に掲載した記事によれば、ウィルカーソンはこの時に野球から離れ、食品会社の冷凍食品部門で夜間労働に従事。その働きぶりは「内部で正式に昇格話が持ち掛けられるほどだった」という。

 しかし、彼は野球人生を諦めきれずに現役に復帰。2013年に独立リーグ球団へ入団すると、2014年にはボストン・レッドソックス傘下へ移籍。ここでMLBへの足掛かりを掴むと、3年後にはミルウォーキー・ブリュワーズで念願のメジャーデビューを飾った。

 苦労を重ねながらメジャーの檜舞台に上がってきた。そのポテンシャルはかねてから折り紙つきで、昨季の3Aでは空振り率は10.04と平均以上をマークし、WHIP(投球回あたり与四球・被安打数合計を表す指標)も作シーズンは1.09とずば抜けていた。ゆえに日本で準備さえ整えば、結果を出せるという自信は阪神首脳陣にはあったはずだ。

 巨人戦後のヒーローインタビューでは、「タイガースファン アイシテル!」と日本語で叫んだウィルカーソン。猛虎の逆襲に向けてキーマンになり得る助っ人は、早くも虎党のハートを鷲掴みした。

構成●THE DIGEST編集部
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