プロ野球

【開幕1か月「MVP」と「逆MVP」|日本ハム】新庄ビッグボス采配で明暗。松本は台頭した一方で用兵に問題あり<SLUGGER>

出野哲也

2022.04.28

西川らの穴を補って余りある活躍を見せた松本。新庄BBの起用に見事答えた形だ。写真:山手琢也

 3月25日に開幕したプロ野球は早くも1ヵ月が経過。絶好調の選手、不振に苦しむ選手など早くも明暗が分かれている。全12球団の開幕からの「MVP」、「逆MVP」を挙げてみよう。今回は日本ハムだ。※成績は4月24日時点

●MVP
松本剛(外野手)


 ドラフト8位指名ながら開幕投手を任され、7試合無失点を続けた北山亘基も健闘していた。だが、チーム打率.228の貧打線にあって、ひとり4割近い高打率をキープしている松本のほうが、より貢献度が高いと考える。

 オープン戦でも24打数6安打と、どうということのない成績だった打者を開幕戦で4番に起用した時は、新庄ビッグボスは一体何を考えているのかと皆が訝しく感じただろう。しかし、この日2安打を放つと、以後も先発出場した20試合でノーヒットは3試合のみと、コンスタントに打ち続けている。

 28安打のうち長打は二塁打が3本しかないし、23日時点でBABIP.422と相当運が良いのは否めない。しかし打つだけでなく、盗塁もリーグトップの8回決めている。オフにノンテンダー扱いで退団した西川遥輝(楽天)と大田泰示(DeNA)はいずれも好調だけに、彼らに代わる外野手が不振だとフロントに対する風当たりも強かっただろうが、松本の予想外の活躍で救われているはずだ。

【動画】暫定首位打者・松本剛の技ありヒット! 今後も安打を量産できるか
●逆MVP
ヌニエス(指名打者)


 賛否両論のビッグボス采配で、明らかにマイナスだと思われるのは打順を動かしすぎる点だ。実力の見極めが必要な若手はともかく、実績のある近藤健介まで日替わりの打順なのは、さすがに意味がわからない。そして2人の新外国人打者、ヌニエスとアルカンタラもそうした用兵の"被害者"になっている。

 特に大砲候補と期待されていたヌニエスは、開幕から22試合で本塁打ゼロ、打率.215と調子がまったく上がっていない。ストライクゾーンの見極めと変化球攻めの両方に苦しんでいる結果、三振数はリーグワーストの27個。数字だけ見れば先発から外されるのも、下位を打たされるのも仕方ない。

 けれども、オープン戦でも打席に立ったのは17回だけで、まだ日本の投手の攻め方に慣れていない状態なのだろう。それなのにこのような起用法が続くのでは、慣れる機会を与えられていないに等しい。せめて外国人打者だけでも、ある程度固定して使えないものだろうか。

文●出野哲也

【著者プロフィール】
いでの・てつや。1970年生まれ。『スラッガー』で「ダークサイドMLB――"裏歴史の主人公たち"」を連載中。NBA専門誌『ダンクシュート』にも寄稿。著書に『プロ野球 埋もれたMVPを発掘する本』『メジャー・リーグ球団史』(いずれも言視舎)。
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