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プロ野球

メジャーはともかく日本での成功例はほぼ皆無。声高に叫ばれる「矢野監督解任論」は本当に阪神の起爆剤になり得るのか?<SLUGGER>

出野哲也

2022.04.21

日本プロ野球では成功例はほぼ皆無。結果が出ていないのは確かだが、矢野監督(写真右側)を解任しただけで阪神がトンネルを抜けられるかは……。写真:産経新聞社

日本プロ野球では成功例はほぼ皆無。結果が出ていないのは確かだが、矢野監督(写真右側)を解任しただけで阪神がトンネルを抜けられるかは……。写真:産経新聞社

 開幕から負けの込んでいる阪神の矢野耀大監督に、早くも休養ないしは解任を求める声が出ている。最初の17試合で1勝しかできなかったとあっては無理もないし、すでに今季限りでの退任を明言しているので、交代させやすい状況ではある。だが阪神に限らず、監督を替えることは本当にチームの浮上につながるのだろうか?

 日本のプロ野球では、シーズン途中で監督が解任される(もしくは辞任する)ような事態はそれほど多くない。そして指揮官を変えた結果、劇的にチーム状態が改善された例も少ない。低迷している原因の多くは監督の采配の良し悪しではなく選手の働きなのだから、それも当然だろう。

 とはいえ、交代後に状態が上向いたケースも皆無ではない。1971年、ロッテは7月13日の放棄試合をきっかけに濃人渉監督を解任。22日から大沢啓二が指揮を執ると、この時点で首位阪急とは8ゲーム差あったのが、直後の11試合で9勝。30日からの直接対決で4連勝するなど、わずか9日でゲーム差0まで詰めた(最終順位は交代前と同じ2位)。
 
 最近だと、2010年のヤクルトが成功例に挙げられる。交流戦で9連敗を喫するなどして、5月27日に高田繁監督が休養。その時点で13勝32敗1分。ダントツ最下位に沈んでいたが、ヘッドコーチの小川淳司が監督代行を務めると、以後は59勝36敗3分。最終的には4位でもクライマックスシリーズ争いに食い込み、小川は翌年正式に監督に就任した。

 しかし、これらの成功例でも優勝までには至らなかった。1950年の2リーグ分立以降、シーズン中に監督が交代して優勝したのは75年の広島が唯一である。しかもこれはジョー・ルーツ監督が球団首脳との意見の相違から4月末に退団し、代行を挟んで5月から古葉竹識が引き継いだもので、成績不振による解任ではない。
 
 メジャーリーグでは日本よりも頻繁に監督が交代するからか、目覚ましい結果を残した例もいくつかある。最も成功したのは03年のマーリンズだろう。16勝22敗の時点でジェフ・トーボーグ監督を解任し、72歳の老将ジャック・マッキーンに立て直しを託すと、その後75勝49敗。ワイルドカードでプレーオフに進み、あれよあれよという間にリーグ優勝、さらにはワールドシリーズでもヤンキースを撃破して、マッキーンは史上最高齢の世界一監督となった。
 
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