プロ野球

最下位脱出どころかCS争いに食い込む!? 阪神のさらなる上昇を示唆する「データ」とは?<SLUGGER>

SLUGGER編集部

2022.06.07

エース青柳晃洋の奮闘もあってか、徐々に調子が上向く阪神。果たしてCS進出なるか!?写真:徳原隆元

 セ・リーグワースト記録の開幕9連敗と文字通り最悪のスタートを切った今季の阪神。5月31日には、2000年以降では最速の54試合目にして自力優勝消滅という不名誉な記録を作ってしまった。だが、ここへ来てようやく調子が上がってきた。6月1日から5連勝を飾り、自力優勝の可能性を復活させるとともに、5位のDeNAに1ゲーム差とようやく最下位脱出がすぐそこまで来ている。

 果たしてこの勢いは今後も続くのか。

 ある指標を着目すると、さらなる上昇に十分期待できることが分かる。その指標とは「ピタゴラス勝率」だ。

 ピタゴラス勝率は、チームの得点と失点から「本来の勝率」を算出するもので、計算方法がピタゴラスの定理に似ていることからその名がついた。言うまでもないが、野球は相手より多く得点したチームが勝つ。そのため、得失点差は実際の勝敗と相関関係が高い。言い換えると、ピタゴラス勝率と実際の勝率が大幅に乖離しているチームは、今後ピタゴラス勝率の方に実際の勝率が近づく可能性が高い。

 実は、阪神はここまで得点が186で、失点は176。得失点差は+10となり、ピタゴラス勝率では30勝28敗1分となる。実際の勝敗が25勝33敗1分だから、実に5勝分も「損」をしている計算だ。

 他のチームも含め、ピタゴラス勝率順で6月5日終了時点のセ・リーグ順位を見ると以下のようになる。
 
※( )は実際の勝利数との差
1 ヤクルト 32勝23敗(-3)
2 広島 30勝26敗(+2)
2 阪神 30勝28敗(+5)
4 巨人 30勝31敗(-4)
5 中日 25勝31敗(-2)
6 DeNA 21勝31敗(-2)

 何と、阪神の30勝28敗はリーグ3位で、2位の広島とも1ゲーム差しか離されていない。一方、DeNAは、ピタゴラス勝敗では21勝31敗。もし得失点差が「忠実に」実際の成績に反映されていたら、ダントツで最下位に沈んでいる計算だ。

 リーグワーストの1試合平均得点3.15と貧打にあえぐ打線、矢野燿大監督の"迷采配"が何かと槍玉に挙げられがちなタイガースだが、現状でもCS争いに食い込むだけのチーム力が十分あることをピタゴラス勝率は示している。

 そもそも、最下位に沈んでいるとはいえ、阪神には確かな強みがある。投手陣だ。5月のチーム防御率は何と1.79(!)。リーグ2位のヤクルトが2.25、3位の広島が3.43だから、いかにずば抜けた数字であるかが分かる。開幕直後は不安定だったブルペンも、防御率2.03でリーグ2位。これほど強力な投手陣を擁しているチームがずっと下位にとどまり続けるとは考えにくい。

 もっとも、ピタゴラス勝率と実際の勝率が乖離したままシーズンを終えるチームもある。昨年のソフトバンクは、ピタゴラス勝率では68勝54敗21分だったが、実際には60勝62敗21分だった。

 そうはいっても、先ほども言及したように、最終的にはピタゴラス勝率と実際の勝率がほぼ同じになるケースが大半。今後、タイガースが一気に上昇してCS争いに食い込んでもそれほど驚くべきではないだろう。

構成●SLUGGER編集部

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