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「甘い球はセンター方向に打つ」。相手の攻略法が変化する中で「打撃の原点」を再確認した大谷翔平に漂う爆発の予感<SLUGGER>

斎藤庸裕

2022.06.19

4日から11試合連続安打を記録するなど、6月はハイアベレージを残している。(C)Getty Images

 大谷翔平(エンジェルス)が、6月に再び調子を上げてきた。17日(現地)のマリナーズ戦を終え、今月は14試合の出場で.315(54打数17安打)、2本塁打、5打点。4月の.247、5月の.250に比べ、確実性が増してきた。19年と21年シーズンはともに6月に絶好調を迎え、昨年は月間で自己最多の13本塁打、23打点、打率も.309をマークし、打ちまくった。

 今年も6月に入り、徐々に状態を上げているが、本塁打数ではやや物足りなさが残る。46本塁打を放った昨年、65試合を終えた時点で本塁打数は17本、一方で今季は13本塁打。特に4月は思うような打撃が出来なかった。ジェレミー・リード打撃コーチは開幕当初、「どの打者にも波はあるもの。彼は大丈夫だ」と心配していなかったが、要因の一つに配球の変化があった。

 「一昨年(20年シーズン)は内側(内角球)のデータ的な数字が悪かったので、(昨季の)最初は内側が多かった。それを引っ張っていた、という感じ」
 5月上旬、大谷はこう明かした。メジャー1年目から、真ん中外寄りのボールをセンターから左方向へ打ち返す打撃が持ち味だったが、次第に相手球団から研究され、弱点を突かれるようになった。3年目の20年シーズン、内角と高めの速球を中心に、低めの沈むボールとのコンビネーションに苦戦。打率、本塁打ともに自己ワーストの結果に終わった。

 大谷は同年、フリー打撃で右方向への打球を増やし、引っ張る打撃に取り組んでいた。そして昨年、内角球や高めのボールに対応。右方向への引っ張る打撃を中心に本塁打を量産した。今季も、開幕当初はその傾向が強かった。だが、相手バッテリーは再び攻め方を変えてきた。

「今年に関してはそれを踏まえての配球の中で、やっぱり甘い球はセンター方向に打つ。基本的なことですけど、配球に偏りがなくなってきているので、そこがやっぱり大事かなと思います」

「配球に偏りがない」とは、外角や内角一辺倒の攻めが少なくなってきたことを意味する。つまり、序盤の内角中心の配球から、また外角の攻めが増えてきたと考えられる。実は昨年、シーズン終盤から外角攻めを投手に要求していた捕手がいた。アストロズのマーティン・マルドナードだ。勝負球では決まってミットを外角に構えていた。
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「なるべく波を小さくして、好調の波を維持していくのが大事」