プロ野球

西武二軍から奪三振ショー!左腕カルロス・ディアスは抱く野望「この直球でNPBに行きたいです」【BC茨城・2人の剛腕ドミニカン:後編】

岩国誠

2022.07.10

コワモテのディアズはマイナー5シーズンで53試合に登板して防御率2.82。95イニングで112三振を奪っている。写真:著者提供

 広島が秋山翔吾を獲得し、巨人がメジャーでも実績のあるリリーフ左腕イアン・クロールを引き抜くなど、各球団が巻き返しに向けて海外から戦力補強に動いている7月。前編ではBCリーグ、茨城アストロプラネッツの剛腕ドミニカン、デイビッド・ペレズについて紹介したが、実はもう一人、茨城にはドミニカ出身の秘密兵器がいる。

 カルロス・ディアス。ビザの関係でチーム合流が今年6月になったが、こちらも快速を誇る左腕だ。豪快なフォームから繰り出されるストレートは最速153キロ。その他、チェンジアップ、スライダー、カーブを操り、BCリーグ公式戦11試合で12イニングを投げ、22奪三振。来日してからいまだに無失点ピッチングが続いており、7月6日の対西武二軍戦では2回で打者6人に対し、5つの三振を奪う快投で存在感を示した。

「ディアスは、豪快な投球フォームの左ピッチャーなので、打者に恐怖心を抱かせ、その上で強い速球が投げられるのが武器ですが、想像以上にストライクに投げるのが上手だなと思っています。最初は『これはフォアボールが多くなりそうだな』と思ったのですが、キャッチボールをしていて、あまり変なところのボールが行かない。見た目以上に、投げるのがうまいと感じています。単純にストライクゾーンに投げるだけで、相手に恐怖を与えられるのはいいところだと思います」

 ペレズを絶賛する茨城の巽真悟投手コーチは、ディアスの能力にも太鼓判を押した。ディアスもまた、ペレズ同様に順調な野球人生を送ってきたわけではない。

 2012年、20歳でインディアンズ(現ガーディアンズ)と契約。しかし2年でリリースされ、14年から16年の3年間、野球から離れて生活をしていた。

「14年に結婚し、別の仕事につきました。その間も『野球に戻りたい』という思いは持っていました。そこで奥さんが、野球をやることを応援してくれた。大変だったけど、今まで野球を続けてきたことで、今回のチャンスをもらえたと思っています」
 
 家族の理解とサポートを受け、17年から野球に復帰。マーリンズやレッズのマイナーや、米独立リーグでのプレーを重ねてきた。さらに上のステージを模索していたなか、今回の来日へと繋がった。

「野球選手として、常に新しい機会を探していました。その中で日本という選択肢が、今の自分にとってベストだと思っています。ビッグリーグ(NPB)に行くために今、ここで頑張っています。自分の武器はもちろんストレート。どんな相手でも、自分のストレートを投げ込んで、NPBに行きたいです」

 そう、力強く語ってくれたディアス。自慢の快速球は、速さだけが武器ではない。それを示してくれたのが前述した6日の西武二軍戦。左右どちらの打者に対しても、両サイドへしっかり制球されたストレートを投げ込んでいた。地方球場の柔らかいマウンドで150キロを連発している状況を考えれば、近年マウンドか硬くなってきているNPBの球場ならば、球速・制球ともにさらなる上積みが期待できそうだ。

 さらに、ディアスもまた、日本野球への適応に向け、真摯に取り組んでいると正捕手・佐久田英尚は証言する。

「やはりクイックが課題で、そこはしっかり取り組んでいますし、試合でも牽制を多く入れたり、工夫して頑張っているのは感じています。牽制のパターンを増やすなどしてくれていますし、そういう部分は捕手としてはありがたいです」

 昨年も茨城は、昨年もシーズン中にセサル・バルガスをオリックスへ、ダリエル・アルバレスをソフトバンクへ送り出した実績があるほか、今年1月には投手の松田康甫が、ドジャースとマイナー契約を交わしたことでも話題となった。

 NPBの支配下選手登録期限までは、あと1ヶ月を切った。愛する家族の元を離れ、ジャパニーズドリームを掴むべく、腕を振り続けるペレズとディアズ。普段は自炊するほど、異国での生活にも適応し、暑さが増す中、コンディションも上向いてきているという。混戦を抜け出す起爆剤となる可能性を秘めた2人の剛腕ドミニカンに吉報は届くか。圧巻の投球をNPBの舞台でも、是非見てみたいものだ。

取材・文●岩国誠