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プロ野球

1148日の苦闘を乗り越えた才木浩人を同僚たちはどう見たか? 虎の正妻・梅野隆太郎が明かした“忘れられない言葉”とは

チャリコ遠藤

2022.07.14

中日戦でついに1軍のマウンドに立った才木。“小休止”を経て帰ってきた未来のエースを同僚たちも感慨深げに見守り、共に戦った。写真:産経新聞社

中日戦でついに1軍のマウンドに立った才木。“小休止”を経て帰ってきた未来のエースを同僚たちも感慨深げに見守り、共に戦った。写真:産経新聞社

 この3年間、こんなにも自由に、力強く腕を振ることなんてできなかった。初球から6球連続で投じた渾身のストレートはほとんどが150キロ超え。8球目には今季最速の153キロも計測した。

 阪神タイガースの才木浩人は、苦難の末にようやくたどり着いた“小高い丘”から喜びの咆哮をあげているようだった。7月3日、敵地・バンテリンドームで行なわれた中日ドラゴンズ戦。20年11月に右肘のトミー・ジョン手術を受けた右腕にとって実に1148日ぶりとなる1軍マウンドだった。

「久しぶりすぎてペース配分が分かっていなくて。2回くらいからバテちゃったっていうのはすごく反省しないといけないところではありますけど……」

 2回以降は球速もやや落ち、相手打線も対応してきた。3点リードをした5回は3安打を集められ、1死満塁のピンチを招いた。ただ、体力は削られても、攻める気持ちは萎えていなかった。投手の柳裕也をフォークで空振り三振に仕留めて2死までこぎ着けると、最後は岡林勇希をストレートで詰まらせて三邪飛。1159日ぶりとなる勝利投手の権利を手にした。

 19年5月の2軍戦で打者1人に投げただけで降板。ここから長い苦闘の日々は始まった。そのときに右肘に走った痛みは、1年以上も続いた。

「起きて、ドアノブを引いたら痛い。それで『ああ、今日も痛いんだ』って。次の日の朝起きたら治ってないかなとかも思った」
 
 そう願っては小さな希望を打ち砕かれる毎日を過ごしてきた。だから「手術前の方がきつかった」のが本音だ。1日でも早くメスを入れたかった。術後のリハビリも決して簡単なものではなかった。それでも、才木は地道に、一歩ずつ、「復活して涙のヒーローインタビューをイメージしてます」と前だけを向いてきた。

 そんな23歳の背中、そして苦闘の日々を同僚たちも見てきた。この日、2回に先制2ランを放ったのは、2016年ドラフトで同期入団の大山悠輔。高卒の才木にとって4歳上の兄貴分は「後ろを守るのもすごく久しぶり。同期で入ったかわいい後輩なので、先に点を取ってあげたいと思っていた」と力強く背中を押した。

 そして7回に登板し、1イニングを零封して白星をアシストしたのは、こちらも同期の浜地真澄。指名順も、背番号も1つ違い、同世代として比べられることも多かった背番号36は、特別な思いを持ちながら仕事を全うした。

「入団時から本当にずっと1歩先をいってましたし、そのおかげで僕も頑張れたっていうのはあるので。良い刺激をずっともらっていた。こうやって、こういう日に一緒に投げられたのはすごく嬉しいこと」

 先にスポットライトを浴びたライバルを追い続けたからこそ今がある。奇しくも中日戦は“小休止”を経て帰ってきた才木と今季に頭角を現した浜地が並び立った日にもなった。
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