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MLB

目を覆わんばかりの拙守と球界屈指のスプリントスピード――ジョー・アデルが潜在能力を開花させる日は来るのか<SLUGGER>

久保田市郎(SLUGGER編集長)

2022.08.02

日本のファンからひときわ冷たい視線を浴びている(ように見える)アデル。「次代のスーパースター候補」と呼ばれるほどの逸材のはずなのだが…(C)Getty Images

日本のファンからひときわ冷たい視線を浴びている(ように見える)アデル。「次代のスーパースター候補」と呼ばれるほどの逸材のはずなのだが…(C)Getty Images

 今、日本で最も冷ややかな視線を浴びているメジャーリーガーと言っていいかもしれない。エンジェルスのジョー・アデルのことだ。

 2020年8月のメジャーデビュー以来、攻守に低調なプレーが続き、「次代のマイク・トラウト」の称号からは程遠い状態のまま。大谷翔平が大活躍してもなかなか勝てないエンジェルスの「負の象徴」となっている感すらある。

 とりわけ大きな失望を与えているのが守備だ。

 7月30日のレンジャーズ戦では、レフト線に飛んだ打球の処理を誤り、打者走者に一気にホーム生還を許す失態(記録は二塁打とエラー)を演じた。わずか38試合の出場で、外野手リーグ最多タイの4失策。打球の目測を誤ったり、カバーが遅れて余計な進塁を許したりと、記録に表れないミスというか、野球センスの欠如を感じさせるミスも目立つ。

 メジャーデビュー直後の20年8月には、ライトでアデルのグラブをはじいた打球がそのままスタンドインして本塁打になってしまう珍プレーもあったが、その頃からほとんど成長していない印象を受ける。スタットキャストの守備指標OAAではライトで+2、レフトで-4、トータルで-2となっているが、“印象度”では-10では済まないだろう。
 スタットキャストでは、OAAとは別に「ジャンプ」という外野守備指標がある。これは簡単に言うと、打球がバットに当たってからの3秒間に「どれだけ素早く反応し、的確なルートを取ったか」を示すもの。この「ジャンプ」で、アデルは何とMLBワースト1%にランクされている。つまり、フィールディング以上に、第一歩目の反応の遅さこそが最大の問題ということだ。

 打撃でも打率.228/出塁率.280/長打率.350と、まだメジャーの投手たちに苦戦を強いられているアデル。三振率33.6%と、粗い打撃にも改善の兆しが見られない。

 だが、一つだけ抜きんでている分野がある。スピードだ。走行中の最速を記録した1秒間に走った距離から算出する「スプリントスピード」は、「ジャンプ」とは対照的にMLB上位2%に入る水準で、大谷はもちろん新人王筆頭候補のフリオ・ロドリゲス(マリナーズ)らも上回る。フィジカルお化けが集まったMLBの中でも、身体能力の高さは群を抜いていることが分かる。時折見せる守備での「好プレー」も、打球反応の遅れをスピードで補っているということなのだろう。

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