高校野球

投手力の花巻東、強打の盛岡大付を打倒した先にあったもの――「守備のチーム」だった一関学院の“変貌”<SLUGGER>

氏原英明

2022.08.07

延長11回裏にサヨナラ勝ちで初戦突破を決めた一関学院。岩手2強を制した底力がそこに見えた。写真:滝川敏之

"岩手2強"に風穴をあけた実力は本物だった。

 12年ぶりに出場した一関学院が、優勝候補の一角に挙げられた京都国際に延長11回サヨナラ勝ち。夏の甲子園では実に20年ぶりとなる勝利を挙げた。

 見事なサヨナラ勝ちの中で、何より目立ったのが一関学院打線の力強いスウィングだ。

 1点を先制された直後の1回裏から、その打棒は際立った。

 1死から3連打で同点とすると、6番・小松大樹のタイムリー三塁打で一気に逆転。ドラフト候補と騒がれる京都国際高の先発・森下瑠大の出鼻をくじく攻撃で、試合の主導権を握ったのだ。

 さらに3回には、1死二塁から4番・後藤叶翔が左翼へ適時打を放ち、1点を追加。6回にも1死からの3連打で1点を追加するなど、中盤までは一関学院打線ばかりが目立つ試合だった。
 
 もともと、一関学院の伝統は「堅い守備」だった。それだけに、今日の試合前は投手陣で粘って少ない得点で勝負してくのだろうと思ったが、まるで様変わりしていた。

 その背景には、ここ数年の岩手県勢の奮闘ぶりがあるのだろう。

 岩手県は今、花巻東高と盛岡大付高の2強と言われている。

 菊池雄星(ブルージェイズ)や大谷翔平(エンジェルス)といった好投手のメジャーリーガーを多く輩出する花巻東。対して、ディフェンスの野球をしていても勝つことはできないと方針転換し、打撃のチームを作り上げた盛岡大付。

 この2校が、2011年から昨年までずっと甲子園出場を分け合ってきた。

 さらに、菊池や大谷をモデルケースとして、岩手県は多くの好投手を生み出してきた。甲子園出場はないとはいえ、"令和の怪物"佐々木朗希(大船渡~ロッテ)もまた岩手の出身。現代の岩手県は、好投手と強力打線というのが一つの特徴となっている。
 
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