高校野球

対山田陽翔の“プロ注目決戦”には勝ったものの――。怪物・浅野が最終打席に残した「課題」<SLUGGER>

氏原英明

2022.08.18

浅野の打棒は間違いなく凄かった。それだけに、“甲子園最終打席”の凡打が本当に惜しまれる。写真:塚本凛平(THE DIGEST写真部)

 高々とレフトの定位置に上がった飛球に、大会随一のスラッガーは何を想ったのだろうか。

 ここしかない場面だった。高松商高が1点ビハインドで迎えた8回表、1死一、二塁の好機。試合を制するために、何としても主砲の一打が欲しい。そんな勝負どころだった。

 しかし、プロも注目する強打者、1番の浅野翔吾は、タイミングを狂わされてレフトフライに終わった。後続も倒れてこの回を無得点で終えると、9回にも2死一、二塁のチャンスを生かせず、高松商は涙を飲んだ。

 改めて、今大会の浅野の打席内容は圧巻というほかなかった。

 2試合で6打数4安打2本塁打4打点。この日も初回、プロ注目の近江のエース山田陽翔が、立ち上がりに制球に苦しんでいるところを見切り、カウント3-2からのスライダーを捉えてレフトへの二塁打で出塁した。

 さらに2打席目は弾丸アーチだ。2点ビハインドで迎えた3回表、2死一塁で打席に立つと、カウント1-1からのストレートをジャストミート。バックスクリーンへぶち込む同点本塁打を放ったのである。少し甘めのストレートだったとはいえ、相手投手はドラフト候補として騒がれる山田なのだ。
 
「大橋捕手のサインを見た山田投手が笑いながら頷いていたので、ストレートで押してくるかなと思ったんで、カウントをとられてもいいからストレートを狙ってみようと思いました」

 まさに起死回生の弾丸アーチだった。

 さらに5回の第3打席では、2死一塁の場面で登場。ツーシームをレフト前へ運んで安打としたのだった。好投手の山田のスライダー、ストレート、そしてツーシーム。すべて別の球種を捉えての3安打は"完勝"と言ってよかった。

 あまりの打棒に7回表には、1死一、二塁で申告敬遠された。

 この時点では3対5と近江を2点差を追っていたが、この直後に高松商は一時逆転する。浅野の次打者、2番の井櫻悠人が満塁でショートへのタイムリー内野安打を放ち1点差とすると、3番の渡辺升翔のライト前への一打で同点。2死になった後も、5番の久保康太郎の押し出し死球でついに1点を勝ち越したのだ。
 
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絶好の場面で喫した凡フライ