武本&渡部の智弁和歌山バッテリーが攻守に躍動。地方大会では1イニングの登板だった国学院栃木・中川の好投にも注目!【甲子園8日目のプロ注目選手たち】
第104回全国高校野球選手権大会も8日目が終了し、全出場校が出そろった。この日に登場したプロ注目の選手たちの活躍ぶりを振り返る。
●武元一輝(智弁和歌山3年/投手兼外野手)
投球:5.1回9安打4失点(自責点4)6奪三振1四球
打撃:4打席3打数0安打1四球
投手としては6回途中4失点で降板となり、打者としても無安打に終わったが、それでもプロのスカウト陣に対して強烈な印象を残したことだろう。ストレートは今大会最速に並ぶ148キロをマーク。少しヒジの位置が低いため上背の割にボールの角度はそれほどでもないが、球持ちが長く、楽に腕を振った140キロ台前半のボールも数字以上の勢いが感じられる。100キロ台のカーブで緩急をつけることができ、スライダーもスピードや変化にバリエーションがあった。
また、バッティングも小さい動きで力強いトップの形を作り、ヘッドスピード、スウィングの軌道もスラッガーとしての高い素質を感じる。第2打席で放ったライト後方への打球は逆風でなければスタンドまで届いていた可能性が高かっただろう。プロの評価も投手か野手かで評価が分かれることになりそうだ。
●渡部海(智弁和歌山3年/捕手):5打席5打数2安打
昨年夏の大会でも、正捕手として全国制覇に貢献した強肩強打のキャッチャー。イニング間のセカンド送球では、力をセーブしていながら1.9秒台前半を計測。実戦でも2度あった盗塁阻止は、いずれも見事なスローイングで楽々とアウトにしてみせた。少しキャッチングが軽率になる場面はあったものの、足がよく動き、ブロッキング能力も高い。
そして、昨年から大きく成長したのがバッティングだ。少し力みはあったものの、下半身の強さと粘りがアップし、マルチヒットを記録。特に第2打席のレフト前ヒットは鋭く引っ張ったもので、打球の速さも素晴らしいものがあった。総合力では全国でも屈指の捕手と言えるだろう。
●中川真乃介(国学院栃木3年/投手):2回1安打0失点0奪三振1四球
この日最もスタンドを驚かせたのが、この中川だ。栃木大会ではわずか1イニングの登板だったが、4回からマウンドに上がると最速146キロのストレートを武器に2イニングを無失点に抑え、智弁和歌山の強力打線を封じてみせたのだ。テイクバックで体をひねる動きが大きく、上半身の強さが目立つフォームだが、それでもしっかりボールを抑え込むことができている、186㎝の長身で角度もあり、低めのボールも勢いがあった。コントロールはアバウトで、変化球も課題は多い典型的な未完の大器だが、これだけの長身とスピードがあるのは大きな魅力である。
文●西尾典文
【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間400試合以上を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。
第104回全国高校野球選手権大会も8日目が終了し、全出場校が出そろった。この日に登場したプロ注目の選手たちの活躍ぶりを振り返る。
●武元一輝(智弁和歌山3年/投手兼外野手)
投球:5.1回9安打4失点(自責点4)6奪三振1四球
打撃:4打席3打数0安打1四球
投手としては6回途中4失点で降板となり、打者としても無安打に終わったが、それでもプロのスカウト陣に対して強烈な印象を残したことだろう。ストレートは今大会最速に並ぶ148キロをマーク。少しヒジの位置が低いため上背の割にボールの角度はそれほどでもないが、球持ちが長く、楽に腕を振った140キロ台前半のボールも数字以上の勢いが感じられる。100キロ台のカーブで緩急をつけることができ、スライダーもスピードや変化にバリエーションがあった。
また、バッティングも小さい動きで力強いトップの形を作り、ヘッドスピード、スウィングの軌道もスラッガーとしての高い素質を感じる。第2打席で放ったライト後方への打球は逆風でなければスタンドまで届いていた可能性が高かっただろう。プロの評価も投手か野手かで評価が分かれることになりそうだ。
●渡部海(智弁和歌山3年/捕手):5打席5打数2安打
昨年夏の大会でも、正捕手として全国制覇に貢献した強肩強打のキャッチャー。イニング間のセカンド送球では、力をセーブしていながら1.9秒台前半を計測。実戦でも2度あった盗塁阻止は、いずれも見事なスローイングで楽々とアウトにしてみせた。少しキャッチングが軽率になる場面はあったものの、足がよく動き、ブロッキング能力も高い。
そして、昨年から大きく成長したのがバッティングだ。少し力みはあったものの、下半身の強さと粘りがアップし、マルチヒットを記録。特に第2打席のレフト前ヒットは鋭く引っ張ったもので、打球の速さも素晴らしいものがあった。総合力では全国でも屈指の捕手と言えるだろう。
●中川真乃介(国学院栃木3年/投手):2回1安打0失点0奪三振1四球
この日最もスタンドを驚かせたのが、この中川だ。栃木大会ではわずか1イニングの登板だったが、4回からマウンドに上がると最速146キロのストレートを武器に2イニングを無失点に抑え、智弁和歌山の強力打線を封じてみせたのだ。テイクバックで体をひねる動きが大きく、上半身の強さが目立つフォームだが、それでもしっかりボールを抑え込むことができている、186㎝の長身で角度もあり、低めのボールも勢いがあった。コントロールはアバウトで、変化球も課題は多い典型的な未完の大器だが、これだけの長身とスピードがあるのは大きな魅力である。
文●西尾典文
【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間400試合以上を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。
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