今年のMVPレースがさらに混迷極めている。
ニューヨーク・ヤンキースのアーロン・ジャッジは現地時間9月5日、本拠地で行われたミネソタ・ツインズ戦に「2番・センター」で先発出場すると、3試合連続となる54号2ランをレフトスタンドに叩き込み、チームも5対2で勝利した。
打った瞬間の一発となった。2対2と同点で迎えた6回裏、無死一塁でジャッジにこの日3打席目が回ってくると、カウント3―1から甘く入ってきたスライダーを一振り。本人も確信する打球は瞬く間にレフトスタンドへ突き刺さり、場内にはMVPコールがこだましたのだった。
【動画】ジャッジがA-RODに並ぶ54号! チームを勝利に導く勝ち越し2ラン
この一発は歴史的な一打でもあった。54本塁打は、ヤンキースの右打者では2007年のアレックス・ロドリゲスに並び歴代最多タイ。また、チーム135試合目で54本以上を記録した選手は、1999年のサミー・ソーサと2001年のバリー・ボンズで57本、21年のベーブ・ルースと98年のマーク・マグワイアが54本で過去に4人しかいない。ここにきて調子を上げたジャッジは年間65発ペースに戻しているのもすごい。
本塁打数メジャー2位の選手が36本(カイル・シュワーバー/フィラデルフィア・フィリーズ)と考えると、ジャッジの傑出ぶりは驚異という他なく、当然MVPの最有力候補に挙げられる。しかし、「60発以上でもMVPの保証はなにもないね」と冷ややかな目で見ているのが、ロサンゼルス・エンジェルス地元ラジオ局のアナウンサー、トレント・ラッシュ氏だ。
ラッシュ氏はこう語る。「1998年、マグワイアが史上初めて70本塁打を打ったけど、MVPは誰だったか分かるか? ソーサ(66本)だ。99年はどうだろう。マグワイアが65発で打点王も獲得したけど、MVPはチッパー・ジョーンズだった。確かにジャッジはとんでもなく本塁打を打っているけど、60本以上でMVPを保証されているという前提自体がないわけだ」。
過去に60本塁打以上の選手はのべ7人いるが、その中でMVPを獲得したのは01年のボンズ、98年のソーサ、61年のロジャー・マリスだけ。確かに60本塁打=MVPという図式は成り立ってはいない。ラッシュ氏がやや批判的にジャッジを見ているのはもちろん、彼の応援しているエンジェルスに大谷翔平というもう一人のMVP有力候補がいるからだろう。
一方でラッシュ氏が指摘した例を見ると、98年にソーサが所属していたシカゴ・カブスはワイルドカードで、99年のチッパーは地区優勝してポストシーズンに出場している。チームを大舞台に牽引したことがMVP投票で大きな後押しになった。この点、ジャッジ所属のヤンキースは地区首位をキープし、ポストシーズン進出も濃厚なのは共通しており、"ジャッジ有利"と言えなくもない。
大谷とジャッジ。ともに歴史的な活躍を見せている中、投票者は何を重視するのか。結局はすべてそこに集約されることだろう。そしてどちらがMVPになったとしても、まったく不思議はない。
構成●THE DIGEST編集部
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打った瞬間の一発となった。2対2と同点で迎えた6回裏、無死一塁でジャッジにこの日3打席目が回ってくると、カウント3―1から甘く入ってきたスライダーを一振り。本人も確信する打球は瞬く間にレフトスタンドへ突き刺さり、場内にはMVPコールがこだましたのだった。
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この一発は歴史的な一打でもあった。54本塁打は、ヤンキースの右打者では2007年のアレックス・ロドリゲスに並び歴代最多タイ。また、チーム135試合目で54本以上を記録した選手は、1999年のサミー・ソーサと2001年のバリー・ボンズで57本、21年のベーブ・ルースと98年のマーク・マグワイアが54本で過去に4人しかいない。ここにきて調子を上げたジャッジは年間65発ペースに戻しているのもすごい。
本塁打数メジャー2位の選手が36本(カイル・シュワーバー/フィラデルフィア・フィリーズ)と考えると、ジャッジの傑出ぶりは驚異という他なく、当然MVPの最有力候補に挙げられる。しかし、「60発以上でもMVPの保証はなにもないね」と冷ややかな目で見ているのが、ロサンゼルス・エンジェルス地元ラジオ局のアナウンサー、トレント・ラッシュ氏だ。
ラッシュ氏はこう語る。「1998年、マグワイアが史上初めて70本塁打を打ったけど、MVPは誰だったか分かるか? ソーサ(66本)だ。99年はどうだろう。マグワイアが65発で打点王も獲得したけど、MVPはチッパー・ジョーンズだった。確かにジャッジはとんでもなく本塁打を打っているけど、60本以上でMVPを保証されているという前提自体がないわけだ」。
過去に60本塁打以上の選手はのべ7人いるが、その中でMVPを獲得したのは01年のボンズ、98年のソーサ、61年のロジャー・マリスだけ。確かに60本塁打=MVPという図式は成り立ってはいない。ラッシュ氏がやや批判的にジャッジを見ているのはもちろん、彼の応援しているエンジェルスに大谷翔平というもう一人のMVP有力候補がいるからだろう。
一方でラッシュ氏が指摘した例を見ると、98年にソーサが所属していたシカゴ・カブスはワイルドカードで、99年のチッパーは地区優勝してポストシーズンに出場している。チームを大舞台に牽引したことがMVP投票で大きな後押しになった。この点、ジャッジ所属のヤンキースは地区首位をキープし、ポストシーズン進出も濃厚なのは共通しており、"ジャッジ有利"と言えなくもない。
大谷とジャッジ。ともに歴史的な活躍を見せている中、投票者は何を重視するのか。結局はすべてそこに集約されることだろう。そしてどちらがMVPになったとしても、まったく不思議はない。
構成●THE DIGEST編集部
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