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智弁和歌山から“メジャー”へ。異例の挑戦をする武元一輝とは何者か? NPBスカウトが評する可能性「間違いなく指名されるレベル」

西尾典文

2022.09.08

しなやかなフォームから投じる力のあるボールに定評がある武元。そのポテンシャルを持って、“野球の本場”に乗り込む。写真:塚本凜平

 10月20日のドラフト会議に向けて有力選手の進路が注目されるこの時期に、驚きのニュースが飛び込んできた。智弁和歌山の武元一輝がアメリカの大学進学を目指し、現地の高校生を対象とした野球イベントに参加していたのである。

 MLBのスカウトも注目する選手が多く出場する同イベントだけに、将来的にメジャー行きを目指すという本人の意図は明確だ。メジャー関係者も集まるイベントへの参加であるため、形式上で「プロ志望届」は提出する。そのうえで彼はNPBのドラフト会議での指名について断る可能性が高い。

 これまでもNPB入りを選択せずに渡米した選手は少なくないが、「高校のドラフト候補」と言われるレベルの選手がアメリカの大学進学を目指すというケースは稀である。

 やはり気になるのは、武元自身が将来的にメジャーという大舞台を目指せるような選手なのかどうか。ちなみに智弁和歌山は昨夏の甲子園で優勝を果たしているが、当時2年生だった武元は1試合、それも1イニングの登板にとどまっている。

 今夏も甲子園では初戦で先発を任されたが、国学院栃木を相手に6回途中4失点で負け投手となっており、強いインパクトは残せなかった。ちなみに今夏に背負った背番号11が示す通り、普段からドラフト候補をチェックしているようなファン以外には、それほど知名度の高い選手ではなかったとも言える。
 
 ただ、187センチ、86キロと恵まれた体格を誇り、ストレートは今夏の甲子園でも出場した全投手の中で最速タイとなる148キロをマークするなど、ポテンシャルの高さには定評がある。あるNPBスカウトも武元について以下のように評している。

「近畿はもちろん、今年の高校生であれば全国的に見ても素材の良さはトップクラスだと思いますね。まず、あれだけの体格で150キロ近いスピードボールを投げられるだけで大きな魅力です。智弁和歌山はもう1人、塩路(柊季)という去年から投げているピッチャーがいて、安定感は塩路の方があるため背番号1をつけていますが、プロが興味を持つのは断然、武元の方でしょう。

 去年までは速いけど変化球やコントロールはまだまだという印象でしたが、今年になってからだいぶ試合も作れるようになりました。上位候補と言うには色々物足りないところはありますが、プロ志望なら間違いなく(支配下で)指名されるレベルの選手だと思いますね」

 このスカウトも話すように、智弁和歌山は昨秋の県大会で早々に敗れて選抜出場を逃しているのだが、その試合で武元は負け投手となっている。当時は筆者の印象も「未完の大器」に過ぎなかった。

 しかし、武元は5月に宮崎で行なわれた宮崎商との招待試合でわずか99球の完封勝利。この試合は現地で見ていたが、立ち上がりから終盤までコントロールを乱さず、変化球も巧みに扱い、カウントを取れており、ドラフト候補としては十分なピッチングだった。
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山田陽翔と比べてもスケール感は上