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MLB

智弁和歌山から“メジャー”へ。異例の挑戦をする武元一輝とは何者か? NPBスカウトが評する可能性「間違いなく指名されるレベル」

西尾典文

2022.09.08

夏の甲子園では悔しさを味わった武元(右)。だが、彼はその経験を糧に大きなステップアップをする。写真:塚本凜平

夏の甲子園では悔しさを味わった武元(右)。だが、彼はその経験を糧に大きなステップアップをする。写真:塚本凜平

 また、その後に行なわれた春の近畿大会決勝の大阪桐蔭戦でも、リリーフながら4イニングを無失点の好投。チームの優勝に大きく貢献している。同じ近畿地区の投手では甲子園で大活躍した山田陽翔(近江)と比べても、スケールの大きさでは上回っている印象だ。

 そして武元の魅力はピッチングだけではない。打者として高いポテンシャルも備えているのだ。大きい構えで打席での雰囲気は抜群のものがあり、柔らかく大きいフォロースルーで長打力も超高校級というレベルにある。

 前述した宮崎商との招待試合でも、両翼の広いサンマリンスタジアムのライトスタンドに打った瞬間に分かるホームランを叩き込んで見せた。また、夏の甲子園で対戦した国学院栃木も武元の打席では外野が極端に下がり、内野手も強烈に引っ張る打球を警戒するシフトを敷き、打撃に相当な警戒していた。

 プロのスカウトからも打者として評価する声も多い。
 
「懐が深く、いいバッティングをしますよね。練習はピッチャーの比重が多いと思うので全体的に淡白なところはありますが、遠くへ飛ばす力は凄いものがあります。打球の角度もいかにもホームランバッターという感じですよね。もっと野手としての練習を積めば凄いバッターになることも十分に考えられます。球団によってはバッターとして育てたいと考えるところもあると思いますね」(前出の近畿地区担当スカウト)

 アメリカで実施されたイベントにも投手だけでなく、野手としてもプレーしているのが確認されている。その際には力強いバッティングを見せていた。大谷翔平(ロサンゼルス・エンジェルス)のような「二刀流ができる」というのは安直。もちろん避けるべきだが、投手、野手のどちらでもプロを目指せる能力の持ち主であるのは間違いない。

 日本の高校からメジャー入りを目指して渡米したケースは、マック鈴木(元マリナーズなど)しか成功例はおらず、その道は険しい。だが、直接プロを目指すのではなく、まず現地の大学で力をつけてからというのも、ある意味で身の丈にあった選択と言えるのではないだろうか。アメリカでの生活に慣れ、腰を据えてメジャーを目指せるというのもプラス面が大きいはずである。

 数年後、メジャードラフトで武元が注目選手となる。そんな未来も決して夢物語ではないだろう。

文●西尾典文

【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間400試合以上を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

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