何かのきっかけで、人間だれしもが大きく変わるチャンスがある。もしかしたら、球史に残る大クローザーにとって、登場曲の変更がそうなるかかもしれない。
今季のメジャーリーグで話題沸騰の登場曲と言えば、メッツの守護神エドウィン・ディアズの「Narcos」だろう。トランペットの演奏とともに颯爽とマウンドへ向かうディアズの格好良さ、そして豪快なピッチングで打者を牛耳る姿は本拠地シティ・フィールドの新名物となり、おもちゃのトランペットを持ち込むファンも現れるようになった。
歴史を振り返れば、歴代最多セーブ1位のマリアーノ・リベラも、2位のトレバー・ホフマンも、それぞれ「Enter Sandman(メタリカ)」、「Hells Bells(AC/DC)」という登場曲が流れるだけで、相手を絶望させていた。
そんな中、およそクローザーにはにつかわしくない登場曲に変えてから突如、不振から脱却した投手がいる。ドジャースのクレイグ・キンブレルだ。
2010年にブレーブスでデビューしたキンブレルは、剛速球とナックルカーブを武器に11年から4年連続最多セーブを記録。18年には史上最年少29歳11か月で300セーブの大台を記録し、一時はリベラの持つ652セーブの最多記録更新が期待されていた。
しかし、近年は制球が乱れてクローザーの座を剥奪されるなど不振に陥り、過去3年間で積み上げたセーブ数はわずか39個。今季加入のドジャースでもクローザーを務めてはいたが、前半戦の33登板で3勝4敗15セーブ、防御率4.35、WHIP1.45と、最強軍団の数少ない弱点とまで言われるほど安定感に欠けていた。
しかし、キンブレルに転機が訪れる。8月21日、本拠地ドジャー・スタジアムで「女性デー」と銘打ったイベントを開催し、多くの選手が女性アーティストの登場曲に変更した。そしてキンブレルは、これまで愛用してきた「Sweet Child of Mine"(ガンズ・アンド・ローゼズ)」から妻の勧めで何と「Let It Go(イディナ・メンゼル)」を採用したのだった。
言うまでもないが、「Let It Go」は世界的大ヒット映画『アナと雪の女王』の劇中歌で、第86回アカデミー賞の歌曲賞にも選ばれた人気ソングだ。誰もが知る名曲とあって、キンブレルがこの曲で登場すると、(女の子を中心に)多くのファンが大合唱で異常な盛り上がりを見せる。この声援が悩めるクローザーを後押ししたのか、21日の登板でキンブレルは1回無失点に抑えると、その後も「Let It Go」を使い続けている。
気づけば、登場曲変更後の6登板(6.1回)は被安打0、防御率0.00、2与四球、6奪三振と圧巻の投球。変更前は42.1回で47安打、19与四球、56奪三振、防御率4.46とあって、現地メディアでも"Let It Go"がキンブレルの幸運のお守りだった!?」と色めき立っているほどだ。
デーブ・ロバーツ監督も"アナ雪効果"にご満悦の様子。8月31日、メッツ本拠地に乗り込んだ際にディアズの登場曲「Narcos」でトランペットを吹いているティミー・トランペットの生演奏を目の当たりにしたことから、「イディナ・メンゼルにもドジャー・スタジアムで歌ってほしいね」と語っているほどだ。
『アナと雪の女王』の原題は『Frozen』。登場曲を変えて以降のキンブレルは、全盛期を思わせる投球で相手打者を凍りつかせている。リーグ最高勝率を誇り、ワールドチャンピオン最有力候補に挙げられるドジャースの"ラストピース"がこれで埋まったのかもしれない。
構成●SLUGGER編集部
【動画】球場に鳴り響く"Let it go"。キンブレルの入場シーンをチェック
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今季のメジャーリーグで話題沸騰の登場曲と言えば、メッツの守護神エドウィン・ディアズの「Narcos」だろう。トランペットの演奏とともに颯爽とマウンドへ向かうディアズの格好良さ、そして豪快なピッチングで打者を牛耳る姿は本拠地シティ・フィールドの新名物となり、おもちゃのトランペットを持ち込むファンも現れるようになった。
歴史を振り返れば、歴代最多セーブ1位のマリアーノ・リベラも、2位のトレバー・ホフマンも、それぞれ「Enter Sandman(メタリカ)」、「Hells Bells(AC/DC)」という登場曲が流れるだけで、相手を絶望させていた。
そんな中、およそクローザーにはにつかわしくない登場曲に変えてから突如、不振から脱却した投手がいる。ドジャースのクレイグ・キンブレルだ。
2010年にブレーブスでデビューしたキンブレルは、剛速球とナックルカーブを武器に11年から4年連続最多セーブを記録。18年には史上最年少29歳11か月で300セーブの大台を記録し、一時はリベラの持つ652セーブの最多記録更新が期待されていた。
しかし、近年は制球が乱れてクローザーの座を剥奪されるなど不振に陥り、過去3年間で積み上げたセーブ数はわずか39個。今季加入のドジャースでもクローザーを務めてはいたが、前半戦の33登板で3勝4敗15セーブ、防御率4.35、WHIP1.45と、最強軍団の数少ない弱点とまで言われるほど安定感に欠けていた。
しかし、キンブレルに転機が訪れる。8月21日、本拠地ドジャー・スタジアムで「女性デー」と銘打ったイベントを開催し、多くの選手が女性アーティストの登場曲に変更した。そしてキンブレルは、これまで愛用してきた「Sweet Child of Mine"(ガンズ・アンド・ローゼズ)」から妻の勧めで何と「Let It Go(イディナ・メンゼル)」を採用したのだった。
言うまでもないが、「Let It Go」は世界的大ヒット映画『アナと雪の女王』の劇中歌で、第86回アカデミー賞の歌曲賞にも選ばれた人気ソングだ。誰もが知る名曲とあって、キンブレルがこの曲で登場すると、(女の子を中心に)多くのファンが大合唱で異常な盛り上がりを見せる。この声援が悩めるクローザーを後押ししたのか、21日の登板でキンブレルは1回無失点に抑えると、その後も「Let It Go」を使い続けている。
気づけば、登場曲変更後の6登板(6.1回)は被安打0、防御率0.00、2与四球、6奪三振と圧巻の投球。変更前は42.1回で47安打、19与四球、56奪三振、防御率4.46とあって、現地メディアでも"Let It Go"がキンブレルの幸運のお守りだった!?」と色めき立っているほどだ。
デーブ・ロバーツ監督も"アナ雪効果"にご満悦の様子。8月31日、メッツ本拠地に乗り込んだ際にディアズの登場曲「Narcos」でトランペットを吹いているティミー・トランペットの生演奏を目の当たりにしたことから、「イディナ・メンゼルにもドジャー・スタジアムで歌ってほしいね」と語っているほどだ。
『アナと雪の女王』の原題は『Frozen』。登場曲を変えて以降のキンブレルは、全盛期を思わせる投球で相手打者を凍りつかせている。リーグ最高勝率を誇り、ワールドチャンピオン最有力候補に挙げられるドジャースの"ラストピース"がこれで埋まったのかもしれない。
構成●SLUGGER編集部
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