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MLBにスピード革命をもたらした個性派スイッチヒッター、モーリー・ウィルスが駆け抜けた生涯<SLUGGER>

豊浦彰太郞

2022.09.28

ドジャースでの通算490盗塁は球団記録。希代のスピードスターがこの世を去った。(C)Getty Images

ドジャースでの通算490盗塁は球団記録。希代のスピードスターがこの世を去った。(C)Getty Images

 昨年のトミー・ラソーダ、ドン・サットンに続き、今年もトミー・デービス(首位打者2回)、マイク・ブリトー(フェルナンド・バレンズエラを発掘した国際スカウト)、専属アナウンサーのビン・スカリーと、ドジャースの歴史を彩った人物の訃報が続いている。今度はモーリー・ウィルスで、9月19日に89年の波乱万丈の人生を終えた。

 ウィルスは、ロサンゼルス移転後のドジャース黄金時代を支えたスピードスターで、1959年、63年、65年と、計3度のワールドシリーズ制覇に中心選手として貢献している。白眉は62年。長くメジャー記録だったタイ・カッブの96盗塁(1915年)を上回る104盗塁を記録し、MVPに選出された。

 MLBでは、ベーブ・ルース登場を機に1950年代までは長打偏重の時代が続き、スピードや小技が軽視された。それゆえ、ウィルスの104盗塁が与えたインパクトは大きかった。

 特筆すべきは盗塁死が13しかなかったことで、成功率は88.9%。1974年にウィルスのシーズンを塗り替える118盗塁を決めたルー・ブロックは33盗塁死で78.1%、1982年に130盗塁を記録し、ブロックを抜いたリッキー・ヘンダーソンは42盗塁死で成功率75.6%だったことを考えると、ウィルスの高い成功率が光る。
 
 もっとも、野球史家でセイバーメトリクスの父ビル・ジェームズは、「当時の捕手たちはスピードベースボールに慣れておらず、ウィルスが走ると諦めて送球しないケースが多かった」と著書で記している。検証データはないが、さもありなんだ。

 実際、塁上での彼の存在自体が投手へのプレッシャーだった。この年は、12連続牽制球をかいくぐり、その次の投球で盗塁を決めたこともあった。

 時にはパフォーマンスも利用した。1970年代に日本で発売されたムック本で、当時国内随一の通とされた八木一郎セ・リーグ企画部長が、「対戦相手に見えるようにスパイクの金具をヤスリで研いだ」というエピソードを紹介している。
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