プロ野球

ヤクルト村上宗隆の“満塁走者一掃ゴロ”がもたらした連覇への挑戦権。自滅で矢野体制終焉の阪神に次期政権で求められるのは――

THE DIGEST編集部

2022.10.15

村上(左)の懸命な走塁が呼び込んだ逆転劇で勝利を飾ったヤクルト。一方で矢野監督(右)率いる阪神は土壇場での失策が命取りとなる結果になった。(C)Getty Images

 セ・リーグ王者に2年連続となる日本一への挑戦権をもたらたしたのは、主砲の全力疾走だった。

 10月14日に行なわれたセ・リーグのクライマックスシリーズのファイナルステージ第3戦は、王手をかけたヤクルトが6対3と逆転で阪神を撃破。野村克也氏が率いた1992、93年以来、29年ぶりとなる2年連続での日本シリーズ進出を決めた。

 決して簡単な逆転劇ではなかった。この日は阪神の先発、青柳晃洋の前に攻めあぐね、3点をリードされる苦しい展開を強いられる。そのなかで虎のエースの牙城をこじ開けたのは、主砲のハッスルプレーだ。

 3点を追う7回裏に相手の一塁手マルテの送球エラーで2点を返し、なおも2死満塁で4番の村上宗隆が打席に立つ。ここで阪神は2番手の浜地真澄にスイッチ。すると、22歳のスラッガーはカウント2-2と追い込まれてしまう。相手バッテリーの攻めに手を焼いた村上は、6球目をなんとかバットに当てる。しかし、打球は力のないボテボテの投手ゴロに。

 だが、村上は諦めていなかった。一塁へ全力で駆け出し、頭から滑り込む。すると捕球した浜地のグラブトスから放られたボールは一塁手マルテの頭上へと高く浮き、ファウルゾーンを転々。その間に走者一掃、3点が入った。
 
 記録上は内野安打。しかし、塁上で驚きの笑みを浮かべた村上の表情が物語る通り、完全に打ち取られた当たりではあった。それだけに燕の若武者が「何としてもセーフになる」という気迫でもぎ取った3点と言っていい。

 試合後のフラッシュインタビューで高津臣吾監督は、「なかなかチャンスもなく、凄く難しい展開のなかであのイニングまで行かれた。でも、四死球を絡めて、ムネ(村上の愛称)が素晴らしい当たりを最後に打ってくれた」と冗談交じりにコメント。さらに会見では「みんなの繋げようという気持ちがあのイニングに繋がったんじゃないかと思う」と、チーム全体を褒め称えた。

 かたや3点を先行しながら逆転負けを喫した阪神は、これで4年に及んだ矢野燿大監督政権が終幕。佐藤輝明や中野拓夢、伊藤将司、湯浅京己など投打に多くの若手が飛躍した一方で、この最終戦でも悪目立ちしてしまった、かねてからの課題である拙守を改善できず……。物悲しい幕切れになった感が否めない。一部報道で岡田彰布氏の就任がしきりに伝えられている次期政権には凡事徹底とともに、全体的なスキルアップが求められそうだ。

構成●THE DIGEST編集部

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